Mr.Children「hypnosis」の解説と歌詞考察だよ♪
不安を”覚悟”に変える為に
楽曲紹介
楽曲収録CD
概要 | 収録作品 | 発売日 |
---|---|---|
4th ダウンロード配信 | hypnosis | 2012年7月11日 |
17th ALBUM | [(an imitation) blood orange] | 2012年11月28日 |
BEST ALBUM | Mr.Children 2011-2015 | 2022年5月11日 |
作詞:桜井和寿/作曲:桜井和寿
豆知識
ドラマ『トッカン -特別国税徴収官-』の主題歌だったよ♪
アルバムジャケット情報
- アートディレクター:丹下紘希
- タイトルの[]に意味はなく、「なんでだろう?」と思わせる為。
MV(ミュージックビデオ)情報
都内スタジオ
撮影スタジオいっぱいに広大な原野のセットを組み撮影した。
監督:柿本ケンサク
Mr.Children「hypnosis」MUSIC VIDEO
タイトルについて
仮タイトルは『三銃士』だった。
ディズニー映画「三銃士」の主題歌『All for Love』をイメージして作ったため。
「hypnosis」=「催眠状態」または「催眠術」という意味。
歌詞の中に「hypnosis」や「催眠」というワードは一切出てきません。
さて、どう繋がるのでしょうか?
歌詞考察
1番 Aメロ(揺れ動く〜)
揺れ動く想いが風に吹かれて
<出典>Mr.Children/hypnosis 作詞:桜井和寿
群青色の夕闇に溶け
迷いを消してくれるなら
“揺れ動く想い”
細い糸に吊された5円玉が振り子の様に揺れている様子。
主人公のボヤけた迷いを感じます。
“群青色の夕闇”
群青色のイメージとして一説では「自分の心の真実を1人で静かに考えたり内省する時間に関わりがある色」と例えられることもあるそうです。
そんな群青色の夕闇の中、主人公はぼんやりと悩んでいます。
一体彼にはどんな迷いがあるのでしょうか?
1番 Aメロ2(すべてが〜)
すべてが思い通りにならぬことくらいは
<出典>Mr.Children/hypnosis 作詞:桜井和寿
知っているつもり でもすんなり
受け入れられもしないから
生きていく上で思い通りにならないことは沢山あります。
それは誰もが人生で一度は感じること。
「すべてが思い通りにいく」なんて誰も思ってはいません。
でも主人公はその事実を受け入れたくない気持ちが少しあるようです。
それが彼の葛藤でした。
主人公は何かに挑戦したいのです。
でも上手くいくかわからない。
思い描く理想には到底及ばないかもしれない。
でも、何とかなるかもしれない。
そんな「不安」と「希望」による迷いがぶつかり合い、振り子のように揺れているのです。
1番 Bメロ(不安に〜)
不安に追いつかれないよう
<出典>Mr.Children/hypnosis 作詞:桜井和寿
願いを今、遠くへ遠くへと
「どうしよう…」と悩めば悩むほど、心を蝕むように不安は押し寄せてきます。
少しでも希望があるならば、「不安」が「希望」に捕まる前に遠くへ飛ばしたい。
だけどそう上手くはいきません。
1番 サビ(今日も見果てぬ夢が〜)
今日も見果てぬ夢が
<出典>Mr.Children/hypnosis 作詞:桜井和寿
僕をまた弄んで
暗いトンネルの向こうに光をチラつかす
叶うならこのまま 夢のまんま
もう現実から見捨てられても
構わないさ
主人公の迷いの根底には、願い続けながらも達せられない夢の続きがあるのです。
今の自分は出口の見えない「暗いトンネル」にいるかのよう。
しかし、その深い闇の中にも微かな光がチラついていました。
光の出所を知りたい。
そこに出口があるのかも。
見てみたい。
そう、その「光」こそが主人公の”夢の続き”なのです。
揺れ動く想いの振り子の左右には「光」と「闇」が板挟み。
心を惑わし、弄んでくる。
でもその光が僅かでも見えていることが、主人公にとっては希望なのです。
“すべてが思い通りにならない”のが現実だとするならば、そんな現実からは見捨てられても構わない。
夢を追い続けることができるのであれば、この心を惑わす催眠状態のようなトンネルに居続けてもいいと思うのです。
しかしこのままじっとしていられるわけもなく、張り詰めていた糸が、プツッと切れます。
2番 Aメロ(自分に潜んでた〜)
自分に潜んでた狂気が首をもたげて
<出典>Mr.Children/hypnosis 作詞:桜井和寿
牙を剥き出し 遠吠えをあげる
もう手懐けられはしないだろう
「このままでいいのか!?」
主人公の潜在意識が声を上げます。
満月を見た狼男のように、牙を剥き、遠吠えを上げる。
そう、主人公は夢を追いたい願望を意図的に抑制していたのです。
そしてその願望は突如、催眠術にかかったように勢力を上げ暴れ出した。
“もう手懐けられはしないだろう”
心の振り子が激しく揺れ動く。
強すぎる重圧。
半ば諦めの中で、覚悟を決めるしかないと諭す主人公。
やがて満月は時と共に満ち欠けていきます。
2番 Bメロ(国道に〜)
国道に弓張り月
<出典>Mr.Children/hypnosis 作詞:桜井和寿
消えそうな細く尊い煌き
国道に弓張り月(半月)。
段々と心が落ち着いていく。
ふと空を見上げ、主人公は改めて自分自身を見つめ直します。
満ち欠けていく月のように、夢は儚く尊い。
“今しかできないことがある”
もう催眠は解かれました。
2番 サビ(オブラートに〜)
オブラートに包んで
<出典>Mr.Children/hypnosis 作詞:桜井和寿
何度も飲み込んだ悔しさが
今歯軋りをしながら僕を突き動かす
新しい何かに出会えるかな
今終わらぬ夢のその先に
僕は手を伸ばす
これまでは”自分に潜んでいた狂気”を刺激しないよう、オブラートに包み抑制させていました。
夢を追い続けたくてもどこかブレーキをかけてしまい、その度後悔をしていたのです。
でも、張り詰めていた糸が切れた瞬間覚醒し、自分を見つめ直すことができた。
悶々と変わり映えのしない現実を過ごすより、この夢の先に勇気を出して手を伸ばしてみたいと思ったのです。
はみ出し者でもいい。
きっと新しい何かに出会えるかもしれない。
“終わらぬ夢のその先”、つまり催眠状態ではない”本当の未来へ”手を伸ばしたいと、覚悟を決めたのです。
ラスサビ(君に会いたい〜)
今日も見果てぬ夢が
<出典>Mr.Children/hypnosis 作詞:桜井和寿
僕をまた弄んで
深い深海に沈んだ希望をチラつかす
叶うならこのまま 夢のまんま
もう現実に引き返せなくたっていい
いつか新しい自分に出会えるまで
そうさ終わらぬ夢のその先に
僕は手を伸ばす
今はまだ主人公の夢は深い深海に沈んだまま。
手の届くところにはありません。
人生は思い通りにいかない。
でも彼は心を一度覚醒させることで、夢を追うことの難しさ、切なさ、そして細く尊い煌めきのような美しさを知ることができたのです。
何度も飲み込んだ悔しさをバネにして、恐れず手を伸ばしてみると覚悟を決めた主人公。
夢を追い続ければ、新しい自分に出会える日がいつかは来るはずです。
“群青色の夕闇”はもう明けました。
そう、きっと主人公が迷い込んだ「hypnosis」は不安を覚悟に変える為の自己催眠だったのです。
聴きどころ
メロディー
AメロからBメロ(ここで最高音「Hi B」に到達)にかけて盛り上がり、サビで一旦Aメロと同じ高さまで落ちる。
そしてサビの後半でまた盛り上がる。
といったように、感情の抑揚を表したような起伏の激しい構成です。
更に転調後のラスサビでは高音域がひたすら続いていて、身悶えるように歌う桜井さんの姿が浮かんできます。
実際当時のテレビ番組で辛そうに歌う姿がありましたが、その辛さがカッコいいと思える曲でもありますね。
歌のリズムも細かく難しいので、比較的難易度の高い曲です。
アレンジ
ピアノとストリング、そしてドラムの迫力ある演奏が印象的な、いわゆるロックバラードです。
リバーブ全開の力強いタムから入るイントロには、これからとてつもない物語が始まるような緊迫感があります。
アレンジで驚いたのは「落ちサビがここでくるか!」というラスサビの構成。
展開を上げてから「深い深海に沈んだ」という歌詞とリンクするかのように落として、最後はまた盛り上がる。
『Any』の『“HOME” TOUR』Ver.を彷彿とさせるような展開が僕好みです。
“揺れ動く想い”を最後まで表現した見事なアレンジだなと思います。
著名人の感想
随時更新します
ライブ&テレビ披露
ライブ
- ap bank fes ’12 Fund for Japan
- [(an imitation) blood orange] Tour
オススメ映像作品
Mr.Children[(an imitation) blood orange]Tour
人気曲にも関わらずライブの演奏頻度は意外にも少ないです。
映像化されているのは「ブラオレツアー」のみ。
圧巻の歌唱力が見応えあり!
テレビ
- 2012年11月18日「Music Lovers」
- 2012年11月28日「日テレ系音楽の祭典 ベストアーティスト2012」
- 2012年11月30日「MUSIC STATION」
- 2012年12月15日「SONGS」
まとめ
最初は『トッカン -特別国税徴収官-』というドラマ主題歌に”ミスチルの曲が起用される”という情報だけがあり、そのタイトルはドラマ放送開始当日まで明かされませんでした。
そしてやっと発表されたタイトルが『hypnosis』
「このタイトルなんて読むの?」
その検索や意味を調べることから入った人も多いのではないでしょうか。
歌詞考察をご覧いただいた通り、タイトルで歌詞の意味が明確になるという珍しいパターンでした。
さてこの曲にはMVが制作されています。
メンバー4人揃っての撮影は『エソラ』以来4年ぶり。
このMVは部分的に撮影されたものではなく、監督の「スタート」の合図で1 曲通して撮影されたらしいです。
4人揃った演奏シーンはやはりカッコいい。
でも一つ注目すべきはメンバーが演奏する周りを舞踏する女性ダンサーです。
そのダンサーの踊りが、タイトル通り”催眠術”にかかっているかのようにとても滑らかで、『hypnosis』の世界観をより体現させているように思います。
もう一つ注目すべきは豪華なセットによる世界観。
曲の1番までは闇の中で歌っているような世界観ですが、少しづつ明るくなっていき、2番サビで一気に広大な大地へ広がっていくストーリーです。
この曲は前向きな曲ではあります。
ですが個人的には、なんとなくネガティブな印象がずっとありました。
多分それは最後に「現実に引き返せなくたっていい」と、どこか投げやりな感じがあったからだと思います。
でも、このMVの広大な大地を見て「あ、まだ希望は無限に広がっているんだ」と解釈することができ、やっと一つに繋がった感じがありました。
悩みの尽きない人生。
もし暗いトンネルに迷い込んだとしても、歩き続ければきっと出口はあるはずです。
だから少しでも光がチラついたなら、迷わず手を伸ばしてみよう。
そんな歌のように思います。