Mr.Children「So Let’s Get Truth」の解説と歌詞考察だよ♪
社会の矛盾から真実を見極めなければならない
楽曲紹介
楽曲収録CD
概要 | 収録作品 | 発売日 |
---|---|---|
5th ALBUM | 深海 | 1996年6月24日 |
作詞:桜井和寿/作曲:桜井和寿
豆知識
ボブ・ディランを意識して作った楽曲なんだって♪
でも制作途中で”長渕剛風”に仕上がってしまったんだとさ。
歌詞の「若き雑草」はウォーターフロント・スタジオの若いエンジニアのニックネームに由来しているそうよ♪
アルバムジャケット情報
- 撮影場所はスタジオ
- 椅子は「アンディー・ウォーホル:電気椅子」をイメージ
- 椅子の上の光は水槽に乳褐色の入浴剤を入れ表現している
- アートディレクター:信藤三雄
桜井「蒼い部屋に椅子がぽんと置いてあって、薄気味悪い影がある。そこにはかつて誰かが座っていたのかもしれないけど、今そこには影しかない。でも、いないのに椅子がぽつんと置いてある不自然さがあって、そして、再びその椅子にまた誰かが座るのかもしれない」
MV(ミュージックビデオ)情報
なし
ミュージックビデオはございません
タイトルについて
「So Let’s Get Truth」を訳すと「真実を知ろう」です。
街の風に吹かれながら、社会への不満を唄います。
歌詞考察
Aメロ(ゴミのような〜)
ゴミのようなダンボール
<出典>Mr.Children/So Let’s Get Truth 作詞:桜井和寿
そこで眠る老婆
錆びた夢の残骸
明日は我が身
だけど素通りする素通りする素通りしたりする
ギター片手にハーモニカをぶら下げ、路上の隅に腰を下ろす主人公。
人の群れや街のざわめき、目に映る社会情勢を眺めながら、感じるままに唄います。
都会の喧騒と雑踏の中、ダンボールを敷いて眠る老婆の姿がありました。
仲良く歩く恋人達、必死に働くサラリーマン、
はしゃぐ若者達。
皆が自分とは”無関係なもの”だと言い聞かせるように目を背け、老婆を横目に素通りしていきます。
しかしその人々も、この場所で歌っている自分も、いつ今の暮らしを奪われるかは分かりません。
成れの果ては「錆びた夢の残骸」
競争社会から生まれる格差。
明日は我が身と分かっていながらも、干渉を避けてしまう。
そんな街の風に吹かれながら、主人公は唄います。
Aメロ2(駄目な日本の〜)
駄目な日本の情勢を
<出典>Mr.Children/So Let’s Get Truth 作詞:桜井和寿
社会派は問う
短命すぎた首相を
嘆くTV BLUES
みんな苦笑してる苦笑してる苦笑したりしてる
日本の首相は頻繁に交代します。
時に1年毎、またはそれ以下で代わることもしばしば。
桜井さんは「短命すぎた首相」という歌詞は、第81代「村山富市」総理大臣が辞めた頃に歌詞を書いていたから浮かんだとコメントしています。
そんな短命政権を嘆くメディア。
辞めるまで叩き続けるメディアも本当に嘆いているのかさえ分かりませんが、日本の情勢を社会派が問題視する中で、報道を観た一般市民は苦笑いするしかないのです。
例えば首脳会議などで、海外の首脳は毎年違う日本のトップと握手を交わすことにもなる。
もはや失笑です。
主人公の歌を遮るように選挙カーでも通り過ぎたのでしょう。
そんな街の風に吹かれながら、主人公は唄います。
Bメロ(我は思想を持たぬ〜)
我は思想を持たぬ愚連隊です
<出典>Mr.Children/So Let’s Get Truth 作詞:桜井和寿
若きこの世の雑草です
団塊の世代が産んだ愛の結晶は
今日も walking in the street
「団塊の世代が産んだ愛の結晶」とは、主人公たちの世代のことです。
僕は何かにこだわって生きているわけではない。
ただ感じたことを感じたままに歌いたいだけ。
はたから見れば、協調性のない個人主義のグレた人間なのかもしれません。
でも違う。
今をちゃんと生きたいだけのしがない雑草なのです。
踏まれても立ち上がりたい。
抜かれても生え変わりたい。
そんな希望と根性を持って今日を歩いています。
なんてことを思いながら主人公は唄います。
Aメロ3(子供らはたんこぶ〜)
子供らはたんこぶ作らず遊び
<出典>Mr.Children/So Let’s Get Truth 作詞:桜井和寿
隣に習えの教養を
植え付けられて顔色を見て
利口なふり利口なふり利口なふりをするが
やがて矛盾を知り苦悩したり試行錯誤する
So Let’s Get Truth……
目の前を歩くのは、選択肢を狭められた子供達。
自由にはしゃぐ姿はそこにありませんでした。
人と違う道を選べば咎められ、人の顔色を伺いながら利口なふりをする。
でも人に合わせて、誰かの真似をして生きていくことが本当に幸せなのだろうか?
僕らは何の為に生きているのだろうか?
やがてはそんな疑問にぶつかる時がきます。
So Let’s Get Truth……
僕たちは真実を知らなければならない。
試行錯誤しながらも、世の中の矛盾から真実を見極めなければならない
「答え」は風に吹かれている。
そんな街の風に吹かれて、主人公は唄い終えます。
楽曲最後に外国人が英語で主人公に話しかけます。
内容は「なかなかイケてるけど、昼間の仕事は辞めるなよ」
それは主人公への忠告。
“お前には何も変えられない”
聴きどころ
メロディー
長渕剛風のイメージですが、元々はボブ・ディランを意識して作られた曲で、歌詞の内容はもちろんメロディーも含め、ボブ・ディランの代表曲『風に吹かれて』を連想させます。
歌詞考察の項目で”「答え」は風に吹かれている”と締めましたが、それは『風に吹かれて』の歌詞を引用したものになります。
なので「ボブ・ディラン」を日本の”言葉”で伝えようとしたら、結果「長渕剛」さんになってしまったそうです。
サザンの桑田さんに近いものも感じますね。
アレンジ
尖った歌と批判的な歌詞とは対照的に、軽快に跳ねたアコギのリズムが印象的。
歩く音、ドアを開ける音、雑踏のざわめき、アコギを叩く音、更には感想を述べる外国人の声など、コンセプトであるストリートライブをリアルに再現しています。
拍手はメンバーみんなで叩いているとのこと。
曲が終わると警告音と共に次曲『臨時ニュース』へ移るなど、短い曲ですがかなり凝った作りになっているように思います。
著名人の感想
随時更新します
ライブ&テレビ披露
ライブ
- REGRESS OR PROGRESS
オススメ映像作品
regress or progress ’96-’97 IN TOKYO DOME
「短命すぎた首相」を「官僚たちの汚職」に歌詞を変えて歌っています。
テレビ
1996年6月28日「FAN」
まとめ
コツコツと足音が響き、ドアを開けた音の先には雑踏のざわめき。
アコギのボディでカウントをとり、不貞腐れたような男がハーモニカとギターで歌い出す。
そんな1分48秒の弾き語りソングです。
実際、道端でギターを演奏しているというシチュエーションでレコーディングされたそうです。
当時の同じ社会風刺ソングである『マシンガンをぶっ放せ』や『フラジャイル』などのように強く訴えかけるというよりは、愚痴を呟くような歌い方で、余計リアルに皮肉や不満が伝わってくるように感じます。
アルバム『深海』においての本作品についても解説していきましょう。
収録曲をご覧ください。
01. Dive
02. シーラカンス
03. 手紙
04. ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~
05. Mirror
06. Making songs
07. 名もなき詩
08. So Let’s Get Truth
09. 臨時ニュース
10. マシンガンをぶっ放せ
11. ゆりかごのある丘から
12. 虜
13. 花 – Memento-Mori –
14. 深海
まずこれから記述することは考察ではなく、桜井さんのインタビュー記事を元にした解説になります。
『深海』は序盤から中盤『名もなき詩』にかけ「愛」をテーマに歌っています。
そして『So Let’s Get Truth』を引き金に、テーマが「社会的」なものに切り替わっているのが分かります。
これには『名もなき詩』までに歌ってきた男と女の枠から、”とある歌詞”をきっかけに外の世界へ出たという物語があるそうです。
その歌詞がこちらです。
“街の風に吹かれて唄いながら 妙なプライドは捨ててしまえばいい”
外へ出た主人公はストリートライブを始めました。
しかしそこから何かが始まるわけではありませんでした。
「外に向かう。しかしそれはこの男にとって同時に内に閉じこもることでもある」
外の世界を見ると同時に迷いが生じてしまったわけです。
「真実を知ろう」と歌った『So Let’s Get Truth』。
更に次の『マシンガンをぶっ放せ』でも「現実に目を向けなさい」と歌っています。
結局明確な”真実”は見つからず、現実を見ることしかできないまま、アルバムは次でまたテーマが「愛」に戻ります。
(この続きは『ゆりかごのある丘から』で解説)
短い曲ですが、アルバム『深海』においてとても重要な1曲になっているのでした。