Mr.Children「祈り ~涙の軌道」の解説と歌詞考察だよ♪
涙はきっと綺麗な川に変わる
楽曲紹介
楽曲収録CD
概要 | 収録作品 | 発売日 |
---|---|---|
34th Single | 祈り 〜涙の軌道/End of the day/pieces | 2012年4月18日 |
17th ALBUM | [(an imitation) blood orange] | 2012年11月28日 |
BEST ALBUM | Mr.Children 2011-2015 | 2022年5月11日 |
作詞:桜井和寿/作曲:桜井和寿
豆知識
タイアップは映画『僕等がいた 前篇』主題歌だよ♪
THE BOOMの『からたち野道』という曲が制作のヒントになったんだぜ。
アルバムジャケット情報
- アートディレクター:伊東玄己
MV(ミュージックビデオ)情報
不明
監督:伊東玄己
Mr.Children 「祈り~涙の軌道」 MUSIC VIDEO
タイトルについて
仮タイトルは『郷愁』。
涙が出るほど辛い状況でも、その涙はきっと綺麗な川になる。
そこに笹舟のような小さな祈りを浮かべればいい。
桜井さんは「届いて欲しいところに手が届かないもどかしさを歌ったもの」とコメントしています。
歌詞考察
1番 Aメロ(悴(かじか)んだ〜)
悴(かじか)んだ君の手を握り締めると
<出典>Mr.Children/祈り ~ 涙の軌道 作詞:桜井和寿
「このまま時間が止まれば…」って思う
覗き込むような目が嘘を探してる
馬鹿だな 何も出てきやしないと笑って答える
季節は寒い冬でしょうか。
主人公は彼女の悴んだ手を握り締めながら「このまま時間が止まれば…」と願います。
それは”幸せな時間を終わらせたくない”という願いの反面、”この苦しみから抜け出したい”という祈りを込めたものでもあります。
彼の迷いを感じとり「何か悩んでるの?」と嘘を探るように彼を見つめる彼女。
それに対し「馬鹿だな、何も出てきやしないよ」と笑って誤魔化す主人公。
でも本当は悩んでいるのです。
1番 Bメロ(遠い未来を〜)
遠い未来を夢見たり 憂いたり
<出典>Mr.Children/祈り ~ 涙の軌道 作詞:桜井和寿
今日も頭の中で行ったり来たり
触らないで なるだけ手を加えぬように
心の軌道を見届けたい
希望に満ち溢れた未来を夢見るも、ふと不安でいっぱいになる時があります。
主人公の苦しみは、思い通りにいかない現実。
でもここでひとつの答えを見出します。
触らないで なるだけ手を加えぬように
心の軌道を見届けたい
自分の気持ちに余計な手を加えず、焦らず慎重にその行く末を見届けるということ。
その為にすべきことが次のセクションで描かれています。
さようなら さようなら さようなら
<出典>Mr.Children/祈り ~ 涙の軌道 作詞:桜井和寿
夢に泥を塗りつける自分の醜さに
無防備な夢想家だって 誰かが揶揄しても
揺るがぬ想いを 願いを 持ち続けたい
主人公は”どうせ夢なんか叶わない”と思ってしまう自分に「さようなら」をします。
せっかく見つけた夢や希望が輝きを失っても、泥を塗りつける必要などないのです。
もしかすると自分はどうしようもない夢想家であり、無防備で傷つきやすいのかもしれない。
でもそれを誰かがからかおうとも、自分の信念を貫くことが大切だと気づくのです。
2番 Aメロ(見慣れた場所が〜)
見慣れた場所が違う顔して見えるのも
<出典>Mr.Children/祈り ~ 涙の軌道 作詞:桜井和寿
本当は僕の目線が変わってきたから
「純粋」や「素直」って言葉に
悪意を感じてしまうのは
きっと僕に もう邪気があるんだね
自分自身の成長や変化によって、周りのものや人に対しての見方や考え方は変わってきます。
「純粋」や「素直」という言葉には裏があると疑ってみたり、でもそれを疑ってしまうということは、自分がそれらを逆手に取るような経験をしてきたから。
このフレーズの「見慣れた場所」とは”主人公の描いた夢の到達点”です。
主人公は純粋な想いで”その場所”を目指していました。
でも中々辿り着けずにいるうちに「今頑張っていることは意味があるのだろうか?」「どうせ無理なんじゃないか?」と、どこかで邪気が生まれてきてしまったのです。
それは叶えられなかった時の自分への言い訳かも知れないし、現実の厳しさを知った時の言い訳かも知れない。
一つ一つ夢への階段を昇っていくにつれ、その邪気によって純粋に夢見た景色が滲んでしまったのです。
2番 Bメロ(忘れようとして〜)
忘れようとして でも思い起こしたり
<出典>Mr.Children/祈り ~ 涙の軌道 作詞:桜井和寿
いくつになっても皆 似たり寄ったり
失くしたくないものが ひとつまたひとつ
心の軌道に色を添えて
辛かった出来事は忘れようと努力しても、ふとした瞬間に蘇ってくるもの(忘れたいもの)。
また、いくつ歳をとっても変わらない部分が誰しもあるもの(変わらないもの)。
そして、”忘れてはいけない大事なこと”も知らず知らずのうちに増えていくもの(大切なもの)。
そうやって失くしたもの、手に入れたもの、あらゆる出来事により、自分で手を加えずともその経験や思い出、感情が、人生の軌道に彩りを与えているのです。
だから、迷ったり悩んだりすることも自分のひとつの色なのです。
2番 サビ(迷ったら〜)
迷ったら その胸の河口から
<出典>Mr.Children/祈り ~ 涙の軌道 作詞:桜井和寿
聞こえてくる流れに耳を澄ませばいい
ざわめいた きらめいた 透き通る流れに
笹舟のような 祈りを 浮かべればいい
「その胸の河口から聞こえてくる流れ」とは心の奥底から湧き上がる自分の想い。
つまり”心の軌道”です。
「上手く流れてくれない…どうしよう…」と迷った時、その想いのスピードを早めたり、緩めたり、堰き止めたりしてはいけません。
耳を澄ませ、流れゆくままに見届けるのです。
そこにもし少しの願いがあるのなら、笹舟のようにそーっと浮かべればいい。
そしてその川の流れを信じることが大切なのです。
Cメロ Dメロ(君が泣いて笑って〜)
君が泣いて笑って
<出典>Mr.Children/祈り ~ 涙の軌道 作詞:桜井和寿
その度心を揺らす
もっと強くありたいって想いで
胸は震えている
忘れないで 君に宿った光
いつまでも消えぬように 見守りたい
君が泣くと僕も悲しい。
君が笑うと僕も嬉しい。
そんな風に君が表情を変える度、自分も同じように心が揺れる。
この感覚を大切にしたい想いが膨らみ「君を守っていけるようにもっと頼り甲斐のある存在になりたい」と、胸を震わせます。
主人公は君に伝えます。
「忘れないで 君に宿った光 」
それは君がこれまで泣いてきたこと、笑ってきたこと。
その経験はきっとこれから君の心の軌道を照らしてくれる。
だから主人公は強く気持ちを押し付けたりせず、そっと見守り続けたいと思うのです。
ラスサビ(さようなら〜)
さようなら さようなら さようなら
<出典>Mr.Children/祈り ~ 涙の軌道 作詞:桜井和寿
憧れを踏みつける自分の弱さに
悲しみが 寂しさが 時々こぼれても
涙の軌道は綺麗な川に変わる
そこに
笹舟のような 祈りを 浮かべればいい
理想と現実とのギャップに苦しむのも「さようなら」です。
涙が出るほど辛い状況でも、その涙はきっと綺麗な川になる。
そして脆く儚く、でも何にも左右されず、迷いなくただ行くべき道へと進んでいく笹舟のような祈りを、その川の流れにそっと浮かべればいい。
もしかしたら、祈ること自体に特別な効力はないのかもしれません。
でも、この川の流れがきっとその笹舟を素敵な場所へ連れてってくれることでしょう。
生きていく中で、”流れに身を任せ、ただ祈ることしかできない状況”は幾度となく訪れてしまいます。
それでも流した涙は綺麗な川に変わると信じて、そこに笹舟のような祈りを浮かべればいい。
とてもキレイな歌詞です。
聴きどころ
メロディー
「まとめ」の項目で詳しく取り上げていますが、震災後新曲を作ることができなかった桜井さんが、次のMr.Childrenを始めるにあたり「日本」を感じられるようなメロディーを意識しながら作ったそうです。
音楽理論的に和風なスケールにしているというわけではないのに、どことなく「和」を感じるのは、桜井さんの想いの強さがそうさているのかなと思います。
哀愁漂うメロディーが美しい歌詞とマッチしていて、安心感もありますね。
歌う時にはサビの三連符に対しての感情の入れ方など難しいところもありますが、僕はカラオケに行くと100%歌う楽曲の一つです(笑)。
それくらい人に聴かせたくなるメロディーです。
アレンジ
ピアノとストリングス主体のシンプルかつ壮大なアレンジ。
いつもこういったタイプの曲は後半の盛り上がりに期待してしまいます。
29th Single『しるし』の転調寸前のように「くるぞ…くるぞ…きたーー!」というワクワク感と鳥肌がたつ感覚がたまらないです。
ストリングスの駆け上がりからの転調が個人的に大好物なので(笑)。
小林武史アレンジの真骨頂ですね。
でも”ギター弾き語りバージョン”なんてのもライブで聴いてみたいですね。
著名人の感想
随時更新します
ライブ&テレビ披露
ライブ
- MR.CHILDREN TOUR POPSAURUS 2012
- [(an imitation) blood orange] Tour
- ap bank fes ’23 ~社会と暮らしと音楽と~
- tour 2023/24 miss you
オススメ映像作品
Mr.Children TOUR POPSAURUS 2012
ポプザもブラオレもどっちが良いとかはないですが、強いて言うならでポプザを推しておきます。
テレビ
- 2012年4月6日「MUSIC STATION」3時間SP
- 2012年5月6日「Music Lovers」Mr.Children 20周年SP
- 2012年5月11日「僕らの音楽」Mr.Children特集
- 2012年11月18日「Music Lovers」Mr.Childrenスペシャルライブ
まとめ
33th Single『HANABI』から“3年7ヶ月ぶり”のシングルということで話題になりました。
こんなに期間が空いた理由は次の3つのことが続いたためです。
①『HANABI』収録の『SUPERMARKET FANTASY』発売後にシングル未収録のアルバム『SENSE』を挟んだこと。
②その『SENSE』発売後のツアー中に東日本大震災が起きたこと。
③震災以降、次のスタートがすぐに切れなかったこと(半年間、曲が作れなかった)。
以上が”3年7ヶ月”の間シングルリリースがなかった理由です。
ではどうやってこの曲が生まれたのか?
ツアー(STADIUM TOUR 2011 SENSE -in the field-)のリハーサル中、震災以降全く曲が作れなかった桜井さんの元に映画『僕等がいた』のタイアップの話がきました。
それを桜井は引き受けます。
引き受けた理由は(桜井)「もし次のスタートを切る原動力が自分の中に無いとしても、何かに影響されたりインスピレーションを受けたりすることで、メロディーが浮かんでくるんじゃないか?」という思いがあったからだそうです。
しかし「やりましょう」と言ったはいいが、ツアー中もずっと曲が浮かんでこない状況が続きます。
そしてツアーが続き終盤に差し掛かった頃、「やっとツアーが終わる」と思った瞬間に、ふと新曲に向かうスイッチが入りました。
「さて、どういう風に次のMr.Childrenをスタートしようか」と思った時、きっかけとなったのが「THE BOOM」の『からたち野道』です。
『からたち野道』はまるで日本に根付いた郷愁をそそるようなメロディー。
桜井さんの中で「次のMr.Childrenは日本人という民族を愛する気持ちみたいなものからスタートしたい」という想いが芽生えます。
するとふとAメロのメロディーが浮かび、この『祈り~涙の軌道』が生まれたのです。
仮タイトルの『郷愁』もこのエピソードによるもの。
「故郷(日本)に寄せる想い」がこの曲には込められているのです。
詩、曲、演奏全てに「美しい」という言葉がとても似合う楽曲だなと思いました。