Mr.Children「擬態」の解説と歌詞考察だよ♪
センスがなくても血を流すくらい頑張ることは出来る
楽曲紹介
楽曲収録CD
概要 | 収録作品 | 発売日 |
---|---|---|
16th ALBUM | SENSE | 2010年12月1日 |
BEST ALBUM | Mr.Children 2005-2010 <macro> | 2012年5月10日 |
作詞:桜井和寿/作曲:桜井和寿
豆知識
伊集院光さんがラジオ番組で「擬態する昆虫」というDVDを紹介された際、“擬態”というワードが桜井さんの中で印象に残ったことがテーマとなるきっかけだったんだよ♪
この曲はSalyuに提供するために書かれた作品だったんだぜ。
でも自分で歌いたいと思ったみたいで、Salyuにはこの曲の代わりに『青空』という曲を提供しているのよね♪
アルバムジャケット情報
- ザトウクジラがブリーチングしている写真
- アートディレクター:「森本千絵」率いるgoen°
MV(ミュージックビデオ)情報
なし
ミュージックビデオはございません
タイトルについて
「擬態」=「他のものに様子や姿を似せること」
桜井さんは擬態の歌詞について下記のように語っています。
「”エソラ”がサウンドに寄せた歌詞だとしたら、”擬態”は文学に寄せて書いている。
しかも、メロディのポップさを感じさせないように、故意に意味不明にしている部分もある。
歌全体で届けようとしていることは、イメージしづらい」
歌詞考察
1番 Aメロ(ビハインドから〜)
ビハインドから始まった
<出典>Mr.Children/擬態 作詞:桜井和寿
今日も同じスコアに終わった
ディスカウントして山のように
積まれてく夢の遺灰だ
(”ビハインド”とは試合に負けている状態)
(”ディスカウント”とは値引き、割引き)
倒れては起き上がり、来る日も来る日も結果を出せずにいる主人公。
掲げている夢も価値を落とし、売れ残りの過剰在庫を抱えるように自分を苦しめていきます。
主人公は今、夢に向かい闘い続けていた日々を諦めかけています。
その夢の輝きは色を失い、遺灰と化し、ただただ積み上げられているのです。
1番 Bメロ(あたかもすぐ〜)
あたかもすぐ打ち解けそうに親しげな笑顔を見せて
<出典>Mr.Children/擬態 作詞:桜井和寿
幽霊船の彼方に明日が霞んでく
遺灰となった行き場のない夢は「幽霊船」として積み上げられ、大海原を彷徨っています。
その向こうで”明日”が笑顔で僕を迎えている。
でもその笑顔に応えることが出来ないまま、”明日”は幽霊船と共に霞んでしまいました。
主人公は現実に足をすくわれているのです。
1番 サビ(アスファルトを〜)
アスファルトを飛び跳ねる
<出典>Mr.Children/擬態 作詞:桜井和寿
トビウオに擬態して
血を流し それでも遠く伸びて
必然を 偶然を
すべて自分のもんにできたなら
現在を超えていけるのに。。。
海を飛び跳ねながら生きるトビウオ。
そのトビウオが陸に放り出され、生命を維持しなければならないとしたらどうでしょう?
きっと血を流しながら飛び跳ねていきます。
明日が霞んで、前に踏み込めずにいる今。
彼は必死に前へ遠く飛ぼうとするトビウオを目の当たりにしました。
「必然と偶然」は「実力と運」。
全てを自分のものに出来たら悩む必要はありません。
トビウオに擬態し、現状打破出来ればと考えます。
(※ラスサビで更に詳しく解説)
2番 Aメロ(相棒は真逆の〜)
相棒は真逆のセンスと真逆の趣味を持って
<出典>Mr.Children/擬態 作詞:桜井和寿
アリキタリなことを嫌った
なんかそれがうらやましかった
例えばサッカーや野球で”エース”と呼ばれる人、天才と呼ばれる人は、何かしら「自分にはないセンス」を持っています。
主人公の“相棒”はそんな輝きを放つ人物であり、言い換えれば自分が”最もなりたい”理想像です。
だけどそれは近いようで遠い存在。
イメージは出来るのに手が届かず、羨ましがることしかできません。
だから勝利を掴めないのです。
2番 Bメロ(ムキになって〜)
ムキになって洗った手に
<出典>Mr.Children/擬態 作詞:桜井和寿
こびりついてる真っ赤な血
いつか殺めた自分にうなされ目覚める
主人公は「勝ちたい」と何度も立ち上がり闘い続けた自分を、不本意に殺めてしまいました。
出来ると信じていた心とその夢を刺したのです。
遺灰は積み上がり、その手にこびりついた血も洗い流せない。
後悔の念に駆られる日々が続いています。
2番 サビ(“効きます”と〜)
“効きます”と謳われたあらゆるサプリメントは
<出典>Mr.Children/擬態 作詞:桜井和寿
胃の中で泡(あぶく)になって消えた
デマカセを 真実を
すべて自分のもんにできたなら
もっと綺麗でいれるのに。。。
うなされて目覚める毎日を薬(サプリメント)で乗り切ろうとしました。
「食べる前に飲むだけ!」
「2週間で生まれ変われる!」
表面上は魅力的なキャッチコピー。
しかしパッケージに書かれているような実感はなかったようです。
理想は簡単に手に入るものではありません。
何がデマカセで何が真実なのかを、上手く見極めながら生きていくことが大切です。
この内容は次のセクションで更に広がります。
Cメロ(富を得た者は〜)
富を得た者はそうでない者より
<出典>Mr.Children/擬態 作詞:桜井和寿
満たされてるって思ってるの!?
障害を持つ者はそうでない者より
不自由だって誰が決めんの!?
目じゃないとこ
耳じゃないどこかを使って見聞きをしなければ
見落としてしまう
何かに擬態したものばかり
表面上では実態は分からないということ。
富を得た者が満たされてるという勝手な理想像。
障害を持つ者は不自由だという先入観。
もっと言えば、
超大手の会社でもブラックな部分があるかもしれない。
仲の良い友達も陰では自分の悪口を言っているかもしれない。
世の中は何かに擬態したものばかり。
見た目や口先に惑わされていては、その実態や本質は見抜けません。
そもそも人は多種多様な生き物。
物事を広く俯瞰で見て、デマカセと真実の線引きを自分の心で見極めていかなければならないのです。
3番 Bメロ(今にも手を〜)
今にも手を差し出しそうに優しげな笑顔を見せて
<出典>Mr.Children/擬態 作詞:桜井和寿
水平線の彼方に希望は浮かんでる
主人公の遺灰を積んだ幽霊船は通り過ぎ去ったようです。
その水平線の先には「希望」という名の”明日”が笑顔で僕を迎えています。
過去の自分を殺め、現在の自分を超えて未来に踏み出す決心が付いたように思えます。
ラスサビ(アスファルトを〜)
アスファルトを飛び跳ねる
<出典>Mr.Children/擬態 作詞:桜井和寿
トビウオに擬態して
血を流し それでも遠く伸びて
出鱈目を 誠実を
すべて自分のもんにできたなら
もっと強くなれるのに。。。
現在を越えて行けるのに。。。
主人公の羨ましがった”相棒”には元々の”センス”があります。
しかし自分にそれがありません。
でも「トビウオ」にならなれる。
血を流し、それでも遠く伸びていくようにがむしゃらに頑張ることはできます。
「必然」「偶然」「デマカセ」「真実」「出鱈目」「誠実」
全てを味方に付けることが出来ればそれが一番の理想。
しかし完璧な人間はいません。
「強くなれたらいいのに」「超えて行けたらいいのに」と思いながら自分が今出来ることをやっていけばいいのです。
主人公は今の自分を受け入れて血を流しながらも明日へ飛び跳ねていくのです。
聴きどころ
メロディー
聴きどころは「Aメロ・Bメロ」→「サビ」への転調。
ゆったりとしたメロディーで始まり、サビで雰囲気を一転させることでただの綺麗なメロディーなだけでなく、力強さを感じられます。
極め付けは「富を得たものは〜」からのセクション。
メッセージ性の強い内容を桜井節の早口で歌い上げ、目が覚めるようなインパクトを残します。
この曲の核にあたるフレーズと言ってもいいでしょう。
歌うのが難しいですが。
他にサビの「トビウオに擬態して」のメロディーライン。
“トビウオ”の「ト」から”擬態して”の「て」まで1オクターブ半も下がっていきます。
このラインには桜井さんの作曲SENSEを感じます。
アレンジ
透き通ったギターのアルペジオと軽快なドラムによる疾走感が魅力的。
アコギは12弦の他にブズーキという民族楽器がメインで使用されています。
Wikipediaでは”洋梨を半分に割った形”とされている弦楽器です。
下記の参考音源を聴いて頂ければイメージが湧くと思います。
「擬態」では主にイントロやサビなどで使用されていますね。
弾いているのは田原さんではくBank Bandでもお馴染みオグちゃんこと小倉博和さんだそうです。
アコギよりもやや金属寄りの音色が、リズム隊の疾走感に爽やかさを加えているように感じます。
歌詞の少し重い感じとは反対に、演奏は耳にとても心地良いです。
著名人の感想
随時更新します
ライブ&テレビ披露
ライブ
- Tour 2011 “SENSE”
- STADIUM TOUR 2011 SENSE -in the field-
- ap bank fes ’12 Fund for Japan
- [(an imitation) blood orange] Tour
- STADIUM TOUR 2015 未完
- Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ
- ONE OK ROCK 2017 “Ambitions” JAPAN TOUR
- SUGA SHIKAO 20th Anniversaryスガフェス!~20年に一度のミラクルフェス~
- Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ
- FATHER&MOTHER Special Prelive
- Tour 2018-19 重力と呼吸
オススメ映像作品
Mr.Children TOUR 2011 “SENSE”
擬態のライブは全部良いです!
どの作品も甲乙つけ難いので、YouTubeでも観れるものを貼っておきます♪
テレビ
2012年5月13日「Music Lovers」
まとめ
この曲の歌詞は一度読んで「これはこうだ」と言い切れるような単純なものではありませんでした。
(実際に歌詞考察は難航しました)
「これはこうかもしれない」「こうだったらいいな」など膨らませれば膨らませるほど分からなくなくなっていきます。
「この解釈が正解」と決めつけるのではなく「こうだったらいいのに…」という理想に”擬態”させる。
そして血を流しながら頑張ろうとする主人公に、リスナーが”擬態”して勇気をもらえる。
そんな楽曲であると感じました。
桜井さんの作詞能力が異常過ぎます。(良い意味で)
『擬態』が収録されている『SENSE』というアルバムはリリースの仕方が少し特殊でした。
- シングルが1曲も入っていないアルバム
- 発売2日前までタイトルや収録曲の告知が一切なし(アルバムの発売日は告知されていた)
発売直前まで”詳細が不明だった”のです。
発表までは「トビウオニギタイ」「リリースニギタイ」
という『擬態』を示唆する謎のキャッチコピーのCMが制作されたくらいで、プロモーション活動もありませんでした。
その意図としては「一切の先入観なく音を受けとめて欲しい」と言う理由があったからなのです。
そんな中、この曲が先行してラジオで楽曲解禁されました。
これで謎のCMの伏線を回収したということになります。
『蘇生』『PADDLE』『Worlds end』『エソラ』『Marshmallow day』などなど。。
『擬態』もそれらと肩を並べるアルバムリード曲。
シングル曲が大衆に向けた傑作とするならば、アルバムリード曲はファンに向けた傑作だと個人的に思っています。
だからこそMr.Childrenが本当にやりたい音楽が詰まっているはずです。
この曲の歌詞は桜井さんの作詞SENSEがふんだんに詰め込まれた作品のように思います。