【Monster】完全解説+歌詞の意味/Mr.Children

I ♥ U
チルカン
チルカン

Mr.Children「Monster」の解説と歌詞考察だよ♪

ポイント

誰の胸の中にも狂気は潜んでいる

楽曲紹介

楽曲収録CD

概要収録作品発売日
12th ALBUMI ♥ U2005年9月21日

作詞:桜井和寿/作曲:桜井和寿

豆知識

チル鶏
チル鶏

仮歌の段階ではサビの「Knock Knock」を「オー ノー オー ノー」と歌っていたんだって!1

チル鶏ブラック
チル鶏ブラック

「もしMr.Childrenがハードロックをやったら?」というテーマで制作されたらしいぜ。2

チル鶏子
チル鶏子

ちょっぴり怖い曲ね…。

アルバムジャケット情報

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  • 原稿用紙の上にタイトルが記され、ハートの部分は潰れたトマトで表現されている
  • “潰れたトマト”である理由は「字にも形にもなっていない衝動的なものこそ、音楽を通して未熟なまま、思いだけが乗っかっているようなものにしたい」というイメージ
  • アートディレクター:丹下紘希

MV(ミュージックビデオ)情報

撮影場所

なし

ミュージックビデオはございません

タイトルについて

「Monster」=誰もが胸の中に潜めている狂気

桜井さんは歌詞について「何かを批判したりしたいわけではなくて、これは妄想の強い個人宗教にハマってしまったような、そんな男の狂気の物語でもある。だからいろいろなことが混沌としていて、どこにでもその狂気に当てはまるっていうか、誰の胸の中にも、この男が持っているような狂気は潜んでいるよ、ということを歌いたかった。」3とコメント。

歌詞考察

1番 Aメロ(あだ名は〜)

あだ名は「トビウオ」
でもお日様が嫌いで この街を潜水して泳いでいく
真向かいのビルを敵のアジトに見立てて 文明やなんかを憎んでみる

セキュリティーがイヤモニして 警戒を強化しだした
ラブ&ピースが与えられた使命だ だけど特に何をするでもない

<出典>Mr.Children/Monster 作詞:桜井和寿

主人公のあだ名は「トビウオ」。
トビウオは海を飛び出し空を飛ぶ“特殊な魚”。
彼が「トビウオ」と呼ばれているのは、普通の人とは違い”周囲から浮いている存在”だからです。

まぁ、「トビウオ」という名前の響きだけはいいが、自分はそんな高みを目指すような性格ではない。
実際は「お日様」の当たる表舞台に出ることが苦手で、周囲から目立たないよう行動するタイプ。
よって”浮いている存在”=社会に馴染めずにいるのです。

だから彼はふと、この生きにくい文明を創り上げていく大きなビルを睨みつけ憎んでみたり、頭の中だけで小さな抵抗をしてみる。
すると妄想が膨らんでいく。
「ビルの警備員(セキュリティー)がイヤモニで何か指示を受けている!」
「僕を警戒しているのだろうか?」
そんな訳はない。
世の中は僕のような不適合者を相手にしない。

「ラブ&ピース」などという人類に課せられた使命に対し、自分が何をしたとて変わらない。
いや、何もしなくたって平和だ。
僕は必要とされていない…。

社会に対する違和感と、憎むことしかできない自分の無力さ。
居場所を見つけられずに苦しむ主人公は、心の解放を試みます。

1番 サビ(Knock〜)

Knock Knock 誰かいますか? 開けてくれますか?
Knock Knock ご存知ですか? 僕はモンスター

<出典>Mr.Children/Monster 作詞:桜井和寿

誰かにこんな自分を受け入れてほしくて、彼は目の前の扉を叩きます。
何度も何度も「誰かいますか?」「開けてくれますか?」とノックする。

世間的には隣のビルで働く人たちは真っ当な人間。
しかし自分は”それ以外のモンスター”であり、醜く哀れな生き物であることを告白します。

「それでもいいなら受け入れてほしい」と、彼は扉を叩き続ける。

彼の被害妄想は続きます。

2番 Aメロ(彼女は〜)

彼女は「カナリヤ」
人目に触れたがらない メモ帳の中にだけ存在している
聞かせてくれたことはまだ無いが きれいな虹色の声で歌うよ
誰ともSEXしなくても 子供だって身籠もれる
全裸でいるのは宗教上の理由だ 慈悲の御心で世界を救う

<出典>Mr.Children/Monster 作詞:桜井和寿

登場人物にひとりの女性が追加されました。
主人公はその女性を「カナリヤ」と呼んでいるようです。

彼女は人目に触れたがらない、そして自分の“メモ帳の中にだけ”存在している。

世間から疎外されていると思い込んでいる彼は、生身の女性と接することができず、自分の好きなように女性の理想像を書き足していきます。

きれいな虹色の声で歌う君。
でも聞かせてくれたことは無い。
それはそうです、彼のメモ帳の中、つまり二次元にしか存在しないのだから。

カナリヤはひ弱な飼いやすい鳥で、『籠の中の鳥』という比喩表現は「カナリヤ」からきているとのこと。
彼は「カナリヤ」同然に彼女をメモ帳という名の想像の中で、飼い慣らしているつもりなのです。

現実に存在しない人物であるため、彼は彼女を思い通りに創り上げてしまう。
営みながなくても子供を身籠り、服を模さずいつも全裸で解放的。
そして慈悲の心で世界を救うことだってできる。

この妄想に何も問題はない。
何故なら僕が創り上げた宗教上の理由であり、それでなんだってまかり通るのだから。

「カナリヤ」と主人公は正反対の人物であり、女神様のような尊い存在。
しかしそんな彼女のような人ですら…。

2番 サビ(Knock〜)

Knock Knock 誰かいますか? 入れてくれますか?
Knock Knock お気付きですか? あなたもモンスター
さぁ どんな叫び声をあげようか?

<出典>Mr.Children/Monster 作詞:桜井和寿

再び扉をノックする場面。

主人公は自分がモンスターであることを自覚しており、自ら誰かと接触を図るためにノックを続けているのです。

そしてその先にいる人物も同じ”モンスター”であると主人公は言います。
でも向こう側の人物はそれに気付いていないだけなんだと。

彼がここで発した言葉は「さぁ どんな叫び声をあげようか?」。
僕もあなたも思うがままに、何も隠さずに解放しようじゃないかと、共感を求めます。

Cメロ(探していました〜)

探していました 分かり合える人を ずっと
悲しい顔して 哀れんでくれてるんですね
でも 分かります そのうち分かります あなたにも

<出典>Mr.Children/Monster 作詞:桜井和寿

主人公がノックし続けていた理由は、分かり合える仲間、分かり合える理解者を探していたからでした。

だけどまだ出会えない。

人は自分を見ると悲しい顔で哀れんでくる。
でもそれは他人事ではなく、きっとあなたにも“そのうち分かる”と主人公は言います。

Cメロ2 ラスサビ(大丈夫〜)

大丈夫 大丈夫 痛くもないし 怖くもないです
大丈夫 大丈夫 僕と一緒 あなたもモンスター

Knock Knock 誰かいますか? 開けてくれますか?
Knock Knock ご存知ですか? 僕はモンスター

Knock Knock お気付きですか? あなたもモンスター
さぁ どんな叫び声をあげようか?

<出典>Mr.Children/Monster 作詞:桜井和寿

狂気を曝けだした主人公は、「痛くない、怖くない、だから解放していいんだよ」とでも言うように、「大丈夫、大丈夫」と相手を安心させます。
誰の胸の中にも狂気は潜んでいる。

“僕と一緒 あなたもモンスター”
真面目な人も、普通の人も、綺麗な人も、ヒーローも、カナリヤも、どんな人も、夢があり理想があり、逃げたり迷ったり、葛藤したり、恋をしたり。
ふとしたことでモンスターになることは誰だって有り得る。

最後まで続く「クエッションマーク」。
この曲にその答えや救いはありません。

言葉のない獣の鳴き声ひとつに「喜び、悲しみ、不安、警戒、威嚇、興奮、恐怖、甘え」などいくつもの解釈ができるように、このモンスターの叫び声の答えは、声をあげた本人にしか理解できないのでしょう。

聴きどころ

メロディー

この曲はイントロからサビの2小節目まで、ほぼワンコード(Emのみ)で演奏されており、その中でメロディーが歌われています(有名所だと「The Beatles」の『Tomorrow Never Knows』のように)。

単調なメロディーなのにもかかわらずストーリーを感じさせるのは、桜井さんの表現力あってのもの。
特にサビの「Knock Knock」はまるで本当にモンスターがドアを叩いているよう。
またCメロの「大丈夫 大丈夫」の歌とタメのリズムからも、扉の向こうにいる誰かへ向けての勧誘や説得のシーンが目に浮かび、物語に浸れます。
そして楽器とのユニゾンで歌う「さぁ どんな叫び声をあげようか?」でトドメを刺されます。

アレンジ

  • 原曲Key=G(Em)
  • BPM(テンポ)120

Mr.Childrenの楽曲でベースメインのイントロは珍しい(『蜃気楼』や『友とコーヒーと嘘と胃袋』などもあり)。
イントロから続くモンスターが迫り来るようなリフは耳にこびりつく。
ナカケー好きにはたまらない1曲ではないでしょうか。

また、2コーラス目から加わるアコースティックギターも良い味を出しています。

歌詞とアレンジ、どちらが先に作られたかは分かりませんが、「Monster」というテーマに沿って練られたアレンジであることは間違いないかと思われます。

著名人の感想

※情報があり次第記載

ライブ&テレビ披露

ライブ

  • DOME TOUR 2005 “ I ♥ U ”
  • DOME TOUR 2009 ~SUPERMARKET FANTASY~
  • FATHER&MOTHER Special Prelive 2018.9.26 TOKYO DOME CITY HALL
  • Tour 2018-19 重力と呼吸
  • Dome Tour 2019 “Against All GRAVITY”

オススメ映像作品

MR.CHILDREN DOME TOUR 2005 “ I ♥ U ” ~ FINAL IN TOKYO DOME ~

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他のツアーの演出に比べるとシンプルですが、それが逆に僕は良いなと思いました。オクターブ上げたサビの「Knock Knock」は声がとてもよく出ており、聴いていて気持ちがいいです。
ただこの曲はどのライブも圧巻のパフォーマンスですので、全部の映像作品をオススメします。

テレビ

なし

まとめ

異様なムードを漂わせるベースラインと時折耳をつくドラムのオープンハイハット。
まるで牙を剥き出すモンスターが刻々と迫り来る様子を表現したようなイントロ。
突如シンセが加わり、距離を詰められたような感覚にさえ陥る。

冒頭から悪い夢の中に連れ去られたような気分を味合わせてくれます。

そして“あだ名はトビウオ”で始まる歌詞もまたミステリアス。
悶えるような桜井さんの歌で、どんどんこの怪奇な物語へと引き込まれていくようでした。

“誰の胸の中にも狂気は潜んでいる”

歌詞の中で繰り返される「モンスター」という表現は、人間ひとりひとりが抱える孤独や不安からなる「狂気」を意味しています。

誰もが一度はイラっとすることはあるし、恋人や家族、友達と喧嘩することもある。
そして人類は未だ争いをやめない。

架空の存在であるはずのモンスターは実は身近にいて、生活を共にしているのです。

歌詞考察でまとめたように、この曲には、だからどうだとか、どこに希望があるとか、その答えは描かれていません、
ただそれが“事実”であるということだけが歌われています。

誰もがモンスターであるならば、どう叫べば他人は自分の怒りや悲しみを理解してくれるのか?

それがこの曲の真髄でもあるのかなと僕は感じました。

桜井さんもモンスターのような精神を作品として見せた時期がありました。
もちろん僕の中にもモンスターは潜んでいるんだと思います。

YouTube版楽曲解説
  1. WHAT’s IN2005年10月号 ↩︎
  2. Wikipedia「I ♥ U」 ↩︎
  3. WHAT’s IN2005年10月号 ↩︎
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