ミスチルファンが映画「私は貝になりたい」を観て(レビュー・感想)

映画・ドラマ

私は貝になりたい(2008年に上映された映画)

個人的評価

評価 :4/5。

主題歌はMr.Children 15th ALBUM『SUPERMARKET FANTASY』の14曲目収録されている楽曲『花の匂い』

< Mr.Children 桜井和寿コメント >
「信じたい 信じたい
誰の命もまた誰かを輝かす為の光」
この映画を観ることで
そんな命の尊さにふれてもらえたらいいなぁ

この曲は映画のタイアップであることと同時に、桜井さんが父親を亡くされた時期に書いた歌詞でもあります。
そこにはこういった想いがありました。

これは、どこまでが映画に合わせて、どこまでが本当に自分の父親に宛て、または自分の母親に宛てて、書いたものかはわかんないところがあって。たぶんわかんないから恥ずかしげもなく歌えてるんだと思うんだけど、父親が亡くなったっていうことだけでは、この作品にはなってなくて。その映画がものすごく、バッドエンドで終わるんですね。『私は貝になりたい』っていう言葉は、戦争の悲劇を伝えるために作者の操作が入ってるなと思っていて。ほんとにその物語の主人公だったら、きっと自分たちの家族が見えるところに生まれ変わりたいと思うんだろうし。まあ少なくとも僕はそうだなと思ったので、そういう歌にしようと。それプラス、自分の父親のこともあったので。

<出典>ROCKIN’ON JAPAN 2009年1月号:桜井和寿
created by Rinker
トイズファクトリー
¥2,351 (2025/09/02 09:28:52時点 Amazon調べ-詳細)

作品情報

あらすじ

舞台は第二次世界大戦末期の日本。床屋を営む清水豊松(中居正広)は、平凡ながらも妻・房江(仲間由紀恵)と幸せに暮らしていました。しかし戦争が激化する中、召集を受けて軍隊へ。そこで上官の命令に逆らえず捕虜の処刑に関与してしまいます。敗戦後、豊松は一般市民として穏やかな生活に戻ろうとしますが、戦犯追及の波に巻き込まれ、連合軍によって逮捕されてしまいます。無実を訴えるも聞き入れられず、やがて死刑判決が下されます。

監督・キャスト

  • 監督:福澤克雄
  • 脚本:橋本忍
  • キャスト
    • 中居正広(清水豊松)
    • 仲間由紀恵(清水房江)
    • 加藤翼(清水健一)
    • 西乃ノ和(清水直子)
    • 柴本幸(敏子)
    • 西村雅彦(根本)
    • 平田満(三宅)
    • マギー(酒井正吉:豊松の友人)
    • 武田鉄矢(竹内)
    • 織本順吉(松田:老人)
    • 伊武雅刀(尾上:中佐)
    • 名高達男(足立:少佐)
    • 武野功雄(木村:軍曹)

レビュー(ネタバレあり)

戦争という悲劇の中、希望は打ち砕かれ、裏切られ、絶望の淵に立たされ、怒りや憎しみから人間を信用できなくなり、もし生まれ変わらなければいけないのなら、「私は貝になりたい」。と全てを諦め拒絶してしまう悲しい物語です。

  • 最も印象的なシーン:処刑直前の中居正広の演技(表情)
  • 最も印象的なセリフ:「どうしても生まれ変わらなければいけないのなら、私は貝になりたい。」

物語は、床屋として平凡で幸せな日常を送っていた豊松が、徴兵により戦場へと送り出されることから大きく転がり出します。
戦場では生き延びるために上官の命令に従わざるを得ず、捕虜の処刑に関わってしまう。戦争が終わり、ようやく家族と再会し新しい生活を始めようとする矢先、戦犯追及によって彼は逮捕され、裁判にかけられます。

豊松は「自分は命令に従っただけだ」と無実を訴えますが、その声は届かず、死刑判決が下されます。
豊松は特別に悪人でもなく、むしろ戦争に巻き込まれたごく普通の庶民。
その理不尽さが胸に突き刺さります。

また、後半胸を打つのは、処刑を前に妻・房江へ残す手紙の場面です。
家族を思う気持ちと、自らの運命を受け入れる覚悟が静かに綴られ、涙なしでは観ることが出来ません。

ついに理不尽すぎる処刑が決行。
そして最後のセリフは「どうしても生まれ変わらなければいけないのな、私は貝になりたい」。
人間であるがゆえに背負わされる罪や苦しみを拒絶し、ただ静かに生きたいと願う彼の祈りは、深い余韻を残しました。

本作は、戦争映画でありながら大規模な戦闘シーンよりも「一人の男の人生と選択」に焦点を当てている点が印象的です。
仲間由紀恵演じる妻・房江の存在も、豊松の人間らしさを支える大きな軸となっており、夫婦愛の切なさが戦争の非情さを一層際立たせています。

観終わった後に重く静かな衝撃が残る映画でした。
戦争というものが、どれほど多くの「普通の人々」の人生を奪い、狂わせたのかを改めて痛感させられる作品です。

ちなみに僕はこの映画を3回観ました。
2週目は十数年ぶりに。
3週目はこの記事を書くためです。

結末を知っていると家族の明るい姿がとても切なく感じます。

この物語に希望は一切ありません。
希望は描かれるが、全て打ち砕かれる。
戦争の悲劇を別の視点で描いた映画でした。

どんな悲劇に埋もれた場所にでも
幸せの種は必ず植わってる
こぼれ落ちた涙が如雨露一杯になったら
その種に水を撒こう

<出典>Mr.Children/花の匂い 作詞:桜井和寿

「U-NEXT」にて見放題

pr

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました