
Mr.Children「花の匂い」の解説と歌詞考察だよ♪
希望と幸せの種
楽曲紹介
楽曲収録CD
概要 | 収録作品 | 発売日 |
---|---|---|
着うた配信 | 花の匂い | 2008年10月1日 |
着うたフル配信 | 花の匂い | 2008年11月1日 |
15th ALBUM | SUPERMARKET FANTASY | 2008年12月10日 |
作詞:桜井和寿/作曲:桜井和寿/編曲:小林武史&Mr.Children/オーケストラ・アレンジ: 小林武史 & 四家卯大
アルバム『SUPERMARKET FANTASY』累計売上:127.8万枚
豆知識

とても泣ける曲ね…。
アルバムジャケット情報
- CGを一切使用していない(デジタルに負けたくない一心で)
- 実際のスーパーを貸し切り、商品も人も全て上から吊っている
- 男女二人の設定は小学時代の初恋相手(詳しいストーリーは→こちらの動画で解説しています)
- アートディレクター:森本千絵
MV(ミュージックビデオ)情報
なし(戦争と家族の絆をテーマに描いたアニメーション作品)
- 監督:半崎信朗
- 登場するウサギの家族の愛と、戦争を描いたストーリー
- 以下↓簡単にストーリー解説
登場するのは、ウサギの父・母・子の家族。
父は植物の研究に打ち込む毎日を送っていました。
ある日、父ウサギのもとに召集令状(赤紙)が届きます。
家族を残して去っていく父。
そして爆弾や戦車、兵士たちが行進するなど、戦争がリアルに描かれます。
一方で、自宅では母が夫の無事を祈り、子どもは父の研究室からこっそり種を持ち出し、それを外に植え育てる。
戻らぬ父。
最後に成長した子どもが満開の花畑の中に佇む姿で物語は閉じられます。
その背景には戦争の爪痕。
戦争は終わったけれど、育まれた家族の愛と思い出は決して消えない。
そんな想いが込められたようなMVでした。
Mr.Children 「花の匂い」 MUSIC VIDEO
タイトルについて

「花の匂い」とは“形はないけれど確かに感じられるもの”。
この曲は映画のタイアップであることと同時に、桜井さんが父親を亡くされた時期に書いた歌詞でもあります。
そこにはこういった想いがありました。
桜井和寿コメント
「これは、どこまでが映画に合わせて、どこまでが本当に自分の父親に宛て、または自分の母親に宛てて、書いたものかはわかんないところがあって。たぶんわかんないから恥ずかしげもなく歌えてるんだと思うんだけど、父親が亡くなったっていうことだけでは、この作品にはなってなくて。その映画がものすごく、バッドエンドで終わるんですね。「私は貝になりたい」っていう言葉は、要は、戦争の悲劇に巻き込まれて、人間に裏切られて、人間を信用できなくなって、次生まれ変わるとしたら私は貝になりたいって締める。ただそこには、戦争の悲劇を伝えるために作者の操作が入ってるなと思っていて。ほんとにその物語の主人公だったら、きっと自分たちの家族が見えるところに生まれ変わりたいと思うんだろうし。まあ少なくとも僕はそうだなと思ったので、そういう歌にしようと。それプラス、自分の父親のこともあったので1」
歌詞考察
1番 Aメロ(届けたい〜)
届けたい 届けたい
<出典>Mr.Children/花の匂い 作詞:桜井和寿
届くはずのない声だとしても
あなたに届けたい
「ありがとう」 「さよなら」
言葉では言い尽くせないけど
この胸に溢れてる
繰り返される“届けたい”という言葉。
その次には「届くはずのない声だとしても」と続きます。
それはただの願いではなく、届かない、聞こえないと分かっていながら、それでも「伝えたい」という抑えきれない想い。
その主人公が伝えたい言葉、また人が大切な誰かと別れる時、最後にどうしても伝えたい二つの言葉、それは「ありがとう」と「さよなら」。
でも主人公はそれでも「言葉では言い尽くせない」と感じています。
感謝も別れも、それだけでは足りないほどの想いが、胸の中に溢れています。
1番 サビ(花の匂いに〜)
花の匂いに導かれて
<出典>Mr.Children/花の匂い 作詞:桜井和寿
淡い木漏れ日に手を伸ばしたら
その温もりに
あなたが手を繋いでいてくれているような気がした
“花の匂い”や“木漏れ日”といった日常のささやかな光景。
ふと漂ってきた花の匂いに導かれるようにして、主人公はあなたのことを思い出しました。
そして木漏れ日の下で手を伸ばしたとき、そこで感じた温もりが「あなた」へとつながった。
実際に手を繋いだわけじゃないけれど、確かにそこに“いる”ように、主人公は感じたのです。
「まだ自分は一人ではない」
花の匂いをきっかけに蘇った記憶から、あなたがそっと手を繋いでくれているような錯覚に包まれた。
それは現実ではなくても、心の中では確かに存在している。
そんな“生と死を超えたつながり”を描いています。
2番 Aメロ(信じたい〜)
信じたい 信じたい
<出典>Mr.Children/花の匂い 作詞:桜井和寿
人の心にあるあたたかな奇跡を信じたい
信じたい 信じたい
誰の命もまた誰かを輝かす為の光
「信じたい」という言葉を繰り返す主人公。
信じたいのは「人の心にあるあたたかな奇跡」。
この奇跡とは、人と人だからこそ生まれる優しさや思いやり、そうした“目に見えない力”のことを指しているのでしょう。
悲しい時に支えてくれるのは、結局は誰かが寄り添ってくれたり、優しくしてくれたり、そんな温もりです。
またさらに、「誰の命もまた誰かを輝かす為の光」と続きます。
人の死は終わりではなく、生きた証はきっと誰かの中で生き続ける。
その小さな奇跡を信じたい。
2番 サビ(“永遠のさよなら”を〜)
“永遠のさよなら”をしても
<出典>Mr.Children/花の匂い 作詞:桜井和寿
あなたの呼吸が私には聞こえてる
別の姿で 同じ微笑みで
あなたはきっとまた会いに来てくれる
「永遠のさよなら」ということは、二度と会えない別れ…つまり「死」を意味しています。
次に「呼吸が聞こえている」という表現があります。
「呼吸をすること=生きている」ということ。
つまり、“あなたは私の中で生きている”、“心の奥であなたの存在を感じている”。
そんな意味が込められているのではないでしょうか。
そして「別の姿で 同じ微笑みで」というフレーズ。
これは“生まれ変わり”という大きなスケールで解釈することもできますし、もっと身近に、日常のなかで誰かの仕草や表情に大切な人の面影を見つける瞬間、とも言えるでしょう。
例えば街ですれ違った子どもの笑顔に懐かしさを覚えたり、友人の何気ない言葉の中にその人の温もりを感じたり。
誰しもそんな小さな再会が、生活の中には存在します。
だからこそ「きっとまた会いに来てくれる」と信じられるのです。
亡き人は遠い存在ではなく、いつでも近くにいてくれる。
そう思えることで、悲しみは希望へと変わっていきます。
Cメロ(どんな悲劇に〜)
どんな悲劇に埋もれた場所にでも
<出典>Mr.Children/花の匂い 作詞:桜井和寿
幸せの種は必ず植わってる
こぼれ落ちた涙が如雨露一杯になったら
その種に水を撒こう
どんなに絶望に覆われた場所であっても、そこには必ず幸せへとつながるきっかけがある。
その“きっかけ”という小さな種はここにもあって、泣きたい時には泣いて、目一杯涙を流したなら、誰かを想って涙を流したなら、やがてその種が芽を出し、綺麗な花になる。
失った人への想いも、喪失の苦しみも、流した涙も、決して無駄にはならない。
「もう一度歩き出そう」
そう思える力を与えてくれるようなフレーズです。
3番 サビ(人恋しさを〜)
人恋しさをメロディーにした
<出典>Mr.Children/花の匂い 作詞:桜井和寿
口笛を風が運んでいったら
遠いどこかで
あなたがその目を細めて聞いている
主人公があなたを想う恋しさは、言葉では伝えきれず、やがて小さな旋律となって風に溶けていきました。
それは誰にも聞こえないまま遠くへ運ばれ、その音はどこかできっとあなたへ届くはず。
あなたはきっと目を細め、微笑みを浮かべながらその音を聞いている。
見守るように、懐かしむように。
そんな優しい希望を描いています。
ラスサビ(“本当のさよなら”を〜)
“本当のさよなら”をしても
<出典>Mr.Children/花の匂い 作詞:桜井和寿
温かい呼吸が私には聞こえてる
別の姿で 同じ愛眼差しで
あなたはきっとまた会いに来てくれる
『花の匂い』は、愛する人との“永遠の別れ”、“本当の別れ”を歌った曲です。
けれど、それは単なる悲しい歌ではありません。
失った痛みを受け止めながらも、そこに残されたぬくもりや記憶が、今も生きる自分の背中をそっと押してくれる。
木漏れ日の光や花の香り、涙が育てる種、その自然のひとつひとつが、大切な人の存在を思い出させてくれる。
“本当のさよなら”をしても、心の奥に残る声や眼差しは、決して消えることがない。
そして、形を変えてでも必ず再び出会える。
その強くて優しい希望を、この歌に託しています。
だからこそ聴き終えたあと、胸の奥には悲しみと同時に、温かな光が灯る。
“花の匂い”とは“形はないけれど確かに感じられるもの”。
悲しみを乗り越えられる希望の光そのものなのかもしれません。
あなたは私の中で生きている。
聴きどころ
メロディー
まず桜井さんのコメントをご覧ください。
「このメロディは前からあって。サビのところとかも、歌詞は全然何もわかってない時から『花の匂い』っていう言葉だけはメロディに乗せて歌っていて。ちょうどその時に、『私は貝になりたい』の話をいただいて。この曲が合うと思ったのは、久石譲さんが音楽担当をしているので、あぁいう童謡っぽくてかつ日本っぽいほのぼのしたメロディが合うなと思って、大まかなアレンジとメロディだけがわかってる状態でこれがいいと思っていて。2」と語っていました。
多くの人がCメロの「どんな悲劇に〜」のセクションがお気に入りかと思いますが、そこの「こぼれ落ちた涙が〜」のフレーズは、実際に久石譲さんが作曲された『海の見える街』のワンフレーズを彷彿とさせます。
Mr.Childrenの楽曲の中では比較的キーが低いため、歌いやすく、とても綺麗なメロディーですね。
アレンジ
歌詞は亡き人とのつながりを描いていますが、後半のボレロ調のリズムが、“あなた”へ向けて安息を願うレクイエムのようにも感じます。
その一定のリズムは「温かい呼吸」にも聞こえますね。
そんなドラムを演奏するJENはこのように語ります。
「僕、これは普通に叩いてることよりもタタタタってやってるところのほうが気持ちいいかもしれないです。真っ直ぐ並んで歩いてる感じっていうか…行進していく感じ。それは秘めた思いだったり、あるいは死を匂わせるものでも心情的にはいいだろうし…進んでいくっていう感じが凄くしたんですよ。だからタタタタって入れたいなって思った。3」
どんな悲劇であっても進んでいく。
そういう思いが込められているのですね。
また中川さんはアレンジについて、「セッションしてる時、最後の最後まで(ベースが)入ってなかったんですよ。だから、このまま入らなくてもいいかなって思ったんですけど…迷ってたかもしれないですね。ピアノと歌とギターっていうアンサンブルにどうやって入れるかってところから始めていって。だから、自分の中では割と力技で入っていったっていうところがある(笑)4」
田原さんに関しては「一生懸命弾きました(満面の笑み)5」とひとこと。
この曲は14曲収録されたアルバム『SUPERMARKET FANTASY』のラストを飾る楽曲として選ばれました。
何故この曲が最終曲となったのか?桜井さんはこのように語ります。
「そもそもアレンジはできてるけど歌詞がついてないっていう段階から、この曲が最後がいいなと思っていて。エンディングが凄く繰り返していて気持ちのいいコード進行だったので、そのままフェードアウトで終わってもいいかなっていう。そういう、音楽的なところで一番最後と思ってました。」
『GIFT』ではなくこの曲が最後というのが、『SUPERMARKET FANTASY』が人気の理由のひとつかもしれませんね。
著名人の感想
随時更新します。
ライブ&テレビ披露
ライブ
- Tour 2009 ~終末のコンフィデンスソングス~
- Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ
- ワン・バイ・ワン・プラス ~10年目のフレームより~
- ap bank fes ’23 ~社会と暮らしと音楽と~(7/16のみ)
オススメ映像作品
Mr.Children Tour 2009 ~終末のコンフィデンスソングス~
映像化されているものはこちらの作品のみですが、本当に素晴らしいのでオススメです。
僕も父を亡くした時、この曲、この映像にとても救われました。
「あなたはきっとまた会いに来てくれる」と笑顔で歌ってくれる桜井さんに何度涙したことか。
最後の「ありがとう」「さよなら」を力強く叫ぶところで涙腺崩壊です。
テレビ
2008年11月20日「うたばん」
2008年11月21日「僕らの音楽」
2009年01月05日「Music Lovers」
2021年03月11日「音楽の日」
まとめ
Mr.Childrenの楽曲で、最初に抱いた印象と今の自分の中での響き方が、ここまで大きく変わった曲は他にないかもしれません。
その理由は、リリースされた当初はまだ自分が若かった(と言っても23歳…)ことと、身近で“死”というものを体験してこなかったから。
だからこの曲の想いに、長く気づくことが出来なかったのかなと思います。
本楽曲は2008年に公開された映画『私は貝になりたい』の主題歌として提供されました。
当時の桜井さんのコメントを紹介します。
< Mr.Children 桜井和寿コメント >
「信じたい 信じたい
誰の命もまた誰かを輝かす為の光」
この映画を観ることで
そんな命の尊さにふれてもらえたらいいなぁ
この映画は、戦争という悲劇の中、希望は打ち砕かれ、裏切られ、絶望の淵に立たされ、怒りや憎しみから人間を信用できなくなり、もし生まれ変わらなければいけないのなら、「私は貝になりたい」と全てを諦め拒絶してしまう悲しい物語です。
でもこの曲ではあえてその物語のテーマとは違う視点からの願いを歌っています。
塞ぎ込んでしまう「貝」ではなく、“同じ微笑みで、同じ眼差しで”会いに来てくれる、と。
そんな優しさで溢れた歌なのです。
僕も父親を亡くした時、どんな恩返しができるだろうかと考えた時、この曲を聴いて改めて思ったことは、やはり感謝をすることが大事だなぁと感じました。
例えば大切な人が花に生まれ変わるとするなら、「涙」という水を撒いた後、「感謝」という暖かい陽射しを与えて、笑って咲く花を咲かせてあげたい。
そんな恩返しも素敵ですよね。
誰しもいつかは大切な人を失う時がやってきます。
命の尊さ、そして命は“儚く消えるのではなく誰かの心に残っている”そんな優しい希望を、この曲は教えてくれました。
この曲と一緒に涙を流した人も多いでしょう。
また、これからこの曲に救われる人もたくさんいるはずです。
「本当のさよなら」をしたなら、「本当のありがとう」も伝えたいと僕は思います。
という素敵な『花の匂い』という楽曲ですが、アルバム『SUPERMARKET FANTASY』リリース時の桜井さんの素敵なコメントがありましたので、最後にそれを紹介して終わりたいと思います。
「『花の匂い』という歌は、映画とリンクして聴いてくれる人がいてくれてもいいし、男と女の別れ話として聴いてくれてもいいし、人の生き死にに関わることとして聴いてくれてもいいと思っています。だから、あんまりこう、受け取り方を限定させたくはないなと思うんです。考えられる三つの選択がそれで、プラスもうひとつは…このアルバムの中には、いっぱい音楽にまつわることが書いてある。それは、音楽ということが、生きていくということであって、ここで言う”声”というのは、そこの想い…、それが声にならない声であっても声が想いを伝えているという隠喩なんです。だから、音楽は消費されるかもしれないし、曲が終われば音は聴こえなくなるけれど、その中にある何か、永遠の声みたいな温かさを持ったものが残ればいい、残ってほしいと思うんです。そういうミュージシャン側からのメッセージもひとつあると思います。6」
“本当のさよなら”をしても
温かい呼吸が私には聞こえてる
- ROCKIN’ON JAPAN 2009年1月号 ↩︎
- MUSICA 2008年11月号 ↩︎
- MUSICA 2009年1月号 ↩︎
- MUSICA 2009年1月号 ↩︎
- MUSICA 2009年1月号 ↩︎
- Switch 2008年12月号 ↩︎