Mr.Children「君がいた夏」の解説と歌詞考察だよ♪
ちょっぴり切ない”ひと夏の恋”
楽曲紹介
楽曲収録CD
概要 | 収録作品 | 発売日 |
---|---|---|
1st ALBUM | EVERYTHING | 1992年5月10日 |
1st Single | 君がいた夏 | 1992年8月21日 |
BEST ALBUM | Mr.Children 1992-1995 | 2001年7月11日 |
作詞:桜井和寿/作曲:桜井和寿/編曲:小林武史&Mr.Children
アルバム『EVERYTHING』累計売上:45.1万枚
シングル『君がいた夏』累計売上:2.2万枚
豆知識
初回限定盤には小冊子が同封されていたんだよ♪(目次:ジャケット情報参照)
2017年に「NTT docomo group × Mr.Children 25th Anniversary コラボキャンペーン」のCMソングとして起用されたな。
歌の中で描かれている浜辺は、桜井さんが子供の頃から親しんだ山形・湯野浜の景色らしいわ♪
大阪のFMラジオ局「FM802」では、8月度ヘビーローテーションナンバーに選定されたんだよ!(ヘビーローテーションとは、FM802が新人アーティストから大型タイアップがない曲を毎月邦楽・洋楽から1曲ずつ推薦して流すというシステム)
シングルジャケット情報
アートディレクター:信藤三雄
初回限定盤には「小冊子」が同封されている
MV(ミュージックビデオ)情報
・「サイパン島」
(成田空港よりサイパン行きの直行便約:約3時間30分)
・Mr.Childrenのメンバー初の海外であり、3泊5日の強行スケジュールだった。
サイパン島でサングラスに黒いスーツというギャング風ないでたちのMr.Children。プールサイドや浜辺で見かける60'sギャルに一目惚れ!?ビーチパラソル越しに後をつけたり、ジェットスキーで追いかけたりして、「彼女」を求める…。1
Mr.Children 「君がいた夏」 MUSIC VIDEO
タイトルについて
タイトルはアメリカの同名映画『君がいた夏』からとられているそうです2。
また、アマチュア時代のタイトルは『夏が終わる』でした。
歌詞考察
当時の桜井さんの解説コメント
「あの詞に出てくる2人は、夏休みの間は一緒に仲良く遊んでいたのに、主人公は女の子に自分の気持ちを打ち明けられないまま、自分の街に帰ってきちゃって別れてしまったんですね。もし、思いを打ち明けていたら。別れないですんだかもしれない3」
ちょっぴり切ないひと夏の恋を描いています。
1番 Aメロ(夕暮れの〜)
夕暮れの海に ほほを染めた君が
<出典>Mr.Children/君がいた夏 作詞:桜井和寿
誰よりも 何よりも 一番好きだった
二人していつも あの海を見てたね
日に焼けた お互いの肩にもたれたまま
一日中 笑ってた
日が沈む前の美しい夕暮れ時の海辺。
オレンジ色の夕日が君の顔に映り込み、君のほほを染める。
その何者にも代えがたい君の姿を、主人公は思い返します。
何度もこの場所へ来て、広大な海を眺めていた二人。
暑い日差しの中、長い時間を共にし、焼けた肩を寄せ合いながら笑い合っていた。
二人にとって特別な海。
そしてかけがえのない時間が、そこにあったのです。
1番 Bメロ(キリンぐらい〜)
キリンぐらい首を 長くしてずっと
<出典>Mr.Children/君がいた夏 作詞:桜井和寿
待っていたのが まるで夢のように
きっと二人は一日が終わる度、次に会う日の約束をしていたのでしょう。
主人公は毎日その日が来るのを首を長くし、待ち焦がれていました。
“待つ楽しみ”も感じながら、この夏を過ごした。
でも、もう季節は変わりつつある…。
まるで夢であったかのような儚さを残しながら。
1番 サビ(また夏が終わる〜)
また夏が終わる もうさよならだね
<出典>Mr.Children/君がいた夏 作詞:桜井和寿
時は二人を 引き離して行く
おもちゃの時計の針を戻しても
何も変わらない Oh I will miss you
時間の流れは誰にも止められない。
毎年、夏は必ず終わります。
君との「さよなら」は避けられない。
時計の針を戻すことができれば、もう一度幸せな瞬間を繰り返すことができるかもしれない。
でもそんな子供じみた空虚な願いは「おもちゃ」のように無力で、叶うことはない。
「Oh I will miss you」(君と会えなくなるのが寂しい…)
主人公はこの想いを引きずりながらも、静かに現実を受け入れようとしています。
2番 Aメロ(君と出会ってから〜)
君と出会ってから 何も手につかずに
<出典>Mr.Children/君がいた夏 作詞:桜井和寿
意味のないラクガキを 繰り返しているよ
誰よりも早く 君を見つけたくて
自転車で駆け抜けた 真夏の朝早く
波打ち際たどって
恋に夢中になってしまうと、仕事や勉強などに集中できなくなることがありますが、ここではまさにその状態を描いています。
君と出会ってから日常が変わってしまいました。
この恋がすべての優先順位を超えてしまい、何も手につかなくなってしまったのです。
心が不安定になり、無意識に繰り返すラクガキ。
頭の中が君のことでいっぱいで、ただ感情に任せた無駄な動作に時間を費やしてしまいます。
今日も待ち合わせはいつもの海辺。
朝早くから衝動的に自転車のペダルを漕ぎ、会いたい一心で波打ち際をたどって駆け抜けます。
2番 Bメロ(秋が来れば僕ら〜)
秋が来れば僕ら また元の場所へ
<出典>Mr.Children/君がいた夏 作詞:桜井和寿
戻ってくけど 気持ちはこのまま
夏が終わり、季節が移り変わると共に、ひと夏の恋もまた一つの区切りを迎える。
「元の場所」つまりそれぞれの生活へ戻るのです。
それでも主人公はこの気持ちを忘れたくない。
現実を受け入れつつも、心のどこかでこの夏の恋が続くことを祈っています。
2番 サビ(また夏が終わる〜)
また夏が終わる もうさよならだね
<出典>Mr.Children/君がいた夏 作詞:桜井和寿
時は二人を 引き離して行く
言葉にできずに そっと離れても
いつか この胸に Oh I will miss you
自分の気持ちを打ち明けられないまま、静かに訪れる別れの日。
今は冷静に別れを受け入れているかもしれませんが、時間が経てば、また寂しくなったり切なくなったりするでしょう。
想いを伝えられなかった後悔が、いつかこの胸に押し寄せてくることを主人公は感じています。
Cメロ ラスサビ(ひまわりの〜)
ひまわりの坂道 駆け降りてく君が
<出典>Mr.Children/君がいた夏 作詞:桜井和寿
振り向いた あの空の 眩しさが今でも
また夏が終わるもうさよならだね
時は二人を引き離して行く
おもちゃの時計の針を戻しても
何も変わらない Oh I will miss you
ひまわりがたくさん咲いた坂道を、君が楽しそうに駆け降りていく。
君が振り向いた瞬間、その姿が空の眩しさと重なり、別れ際の今も主人公の心に残っています。
その眩しさは、恋の輝き、そして過ごした日々の煌びやかさを象徴しているのかもしれません。
夏が終わり、戻らない日々を受け入れた主人公。
波が寄せては引くように、恋もまた時に近づき、時に遠ざかる。
この曲は、そんな儚い”ひと夏の恋”を描いた作品なのでした。
聴きどころ
メロディー
アマチュア時代からある曲ですが、デビュー前と後では歌詞とメロディーが若干違います。
小林武史プロデュースで多くのフレーズが変更、追加されたようです。
歌詞の違いについては「まとめ」の項目でやりますので、ここではメロディーについて解説します。
大きく違うのはサビの折り返し前。
デビュー後は「もうさよならだね 時は〜」の後は音が下がっていきますが、デビュー前の音源では音が上がっていきます。(そもそも歌詞が違っているのですがここでは割愛)
他にCメロ(ひまわりの〜)も違いがあり、歌詞もメロディーも半分以上は別物です。
どちらも良さがあり、今聴くとデビュー前のものに新鮮さを感じてしまいますが、やはりデビュー後のほうがより自然な展開になるようアップグレードされているのは確かです。
聴き比べることで、コバタケマジックの凄さを垣間見たような気になれます。
アレンジ
爽やかなスライドギターの音色が印象的です(ボトルネックという小道具を作った奏法)。
田原さんといえばスライドギターのイメージが強いです。
『名もなき詩』や『ニシエヒガシエ』など、シングルだけでも多用されていますね。
この曲を聴くと田原さんの奏でるギタースタイルは、この頃から今も変わらないものがあるなぁと感じます。
レコーディングは都内の「パワーハウス(2020年に営業終了)」というスタジオにて行われたそうです。
関係者曰く、デビュー後間もないため演奏のクオリティーがまだまだ低く、千本ノックのように何度も何度もやり直しを強いられていたとのこと。
1音1音噛み締めながら聴きたくなるエピソードですね。
著名人の感想
どうしようもない不安や孤独に陥った時、僕はこの曲を聴く事にしている。
SOPHIA:松岡充
「君がいた夏」は聴く度にきらきら光るあの頃を鮮明に想い出させてくれる。
そして、また歩き出そうと心から思えるのです。
ライブ&テレビ披露
ライブ
- アマチュア時代(様々なイベントやライブハウスにて)
- ’92 EVERYTHING TOUR
- ’92 Your EVERYTHING TOUR
- ’92-93 Kind of Love TOUR
- FM802 MEET THE WORLD BEAT 1993
- 平成鯱音楽サミット
- SOUND SELECTION ’93
- KIRIN SOUND TOGETHER POP HILL ’93
- ’93 Versus TOUR
- ’94 Special Concert
- SOUND PARADISE ’94
- SOUND CONIFER 229
- SOUND BREEZE ’94
- STADIUM TOUR Hounen Mansaku 夏祭り1995 空(ku:)
- CONCERT TOUR POPSAURUS 2001
- FM802 MEET THE WORLD BEAT 2004
- Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ(1公演のみ)
- Reborn-Art Festival × ap bank fes 2017
- DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25
オススメ映像作品
LIVE DVD / Blu-ray 『Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25』
ラスサビを観客が歌うところに感慨深いものがあり、自然と涙が溢れてきます。
テレビ
1992年「テレビ神奈川(TVK)Live TOMATO」
まとめ
ご存知、Mr.Childrenの記念すべき1st Singleです。
ただ、1st Singleではありますが、“デビュー作品ではない”という少しややこしい位置付け。
ではどういう経緯でこの曲が1st Singleとしてリリースされたのか?
まずはそちらを解説します。
・デビュー作ではない理由は?
シンプルに1st ALBUM『EVERYTHING』からのシングルカットだから。
Mr.Childrenはアルバムがデビュー作にあたるため、シングルはデビュー2作品目となります。
しかしそれは、メンバーが意図して決めたことではないのです。
じゃあ誰が決めたのか?
・シングルカットを決めたのは?
少し現実的な話になりますが、『君がいた夏』のシングルカットはメンバーが決めたわけではなく、なんとレコード会社が決めたことだったのです。
・メンバーの反応は?
しかしメンバーはその会社の判断に否定的だったわけではなく、曲の反応が良かったのも事実で、どちらかというと客観的に「それは良かったですね」と他人事のように思っていたそうです。
桜井さんは「あの頃はスケジュールが決まってれば、そこに向けて頑張るだけだったから。当時のことは、レコード会社とマネジメントがやったことで、自分たちの計算とか全然なかった4」と語っています。
とにかく忙しいデビュー期間だったこともあり、“1枚目”に対するこだわりを持つ余裕すらなかったようですね。
こういった経緯があり、『君がいた夏』は1st Singleとしてリリースするに至りました。
歌詞について振り返ると、桜井さんはこの曲についてこのようにも語っています。
「少し前まであれだけ賑わっていたのに、気づけばみんないなくなっている。あのとき感じた寂しさ、浜辺の景色は、その後もずっと、胸に残っていた。そして時々、ふと記憶の扉が開いて、思い出されるものにもなっていた」
この曲の主人公は気持ちを打ち明けられないまま、好きな女の子と別れてしまいました。
きっと彼はその後も君と会えることはなく、本当に“ひと夏の恋”の思い出として終わってしまったのだと思います。
この夏の出来事を思い出として、記憶の扉の中に大切にしまっているのかなぁ…と。
青春ってそういうものですよね。
では最後に『君がいた夏』のリリース前の原型『夏が終わる』についてもふれておきましょう。(耳コピのため一部不明な箇所があります)
※赤文字が変更された歌詞です。
夕暮れの海に ほほを染めた君が
誰よりも 何よりも 一番好きだった
二人していつも あの海を見てたね
宿題の絵日記も 穴の空いたままで
一日中 笑ってたキリンぐらい首を 長くしてずっと
待っていたのが まるで夢のように※また夏が終わる もうさよならだね
時は二人 引き離す
おもちゃの時計の針を戻しても
何も変わらない Oh I will miss you君と出会ってから 何も手につかずに
意味のないラクガキを 繰り返しているよ
「学校も塾も なくなればいいけど
退屈な大人にはなりたくはないよね」
君の言う口癖秋が来れば僕ら また元の場所へ
戻ってくけど 気持ちはこのまま※リピート
霧雨のように(or 夜) 僕を迎えにきて
<出典>Mr.Children/夏が終わる 作詞:桜井和寿
寂しくて (???) 今 君に会いたい
※リピート
『君がいた夏』の歌詞と比べてみると、設定や年代を特定するワードが無くなっていますが、『夏が終わる』では「宿題」や「学校、塾」などの歌詞が使われており、主人公達の設定は”学生”であることが明確です。
ですので『君がいた夏』も学生の”夏休み”の出来事を描いていることは分かりますが、あくまで普遍的な恋愛ソングに作り変えられています。
それはおそらく小林さんからのアドバイスからなるものです。
桜井さんはデビュー以降、誰もが共感できる歌詞を次々と生み出します。
その潜在能力を引き出してくれたのは、小林武史さんの存在があったからといっても過言ではありません。
レコーディングの千本ノックも含め、デビューアルバム『EVERYTHING』に収録されたこの曲を筆頭に、プロとしてのMr.Childrenの歴史がスタートしました。
その歴史に終止符が打たれるまで、いや、それ以降もずっと大切にしていきたい作品の一つですね。
- TOY’S BOX Vol.43 ↩︎
- 『Mr.Children 1992-1995』ライナーノーツ ↩︎
- 『GB』ソニー・マガジンズ 1992年10月号 ↩︎
- popsaurus mr.children ↩︎