Mr.Children「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」の解説と歌詞考察だよ♪
頑張っても報われない世の中
楽曲紹介
収録CD
概要 | 収録作品 | 発売日 |
---|---|---|
7th Single | everybody goes -秩序のない現代にドロップキック- | 1994年12月12日 |
6th ALBUM | BOLERO | 1997年3月5日 |
作詞:桜井和寿/作曲:桜井和寿・小林武史
豆知識
当初は前作『Tomorrow never knows』のカップリング候補だったんだよ!(シングルとして発売された理由は後ほど解説)
社会風刺的な歌詞は漫画「ゴーマニズム宣言」に影響されて書いたんだってさ。
桜井さんはプロレス技を歌詞で使用するにあたり、わざわざ領収書を切って雑誌『週間プロレス』を購入したのよ♪
コーラス隊(es sisters)に「MY LITTLE LOVER」のakkoさんが参加しているね!
シングルジャケット情報
- ジャケットの男の子の名前は「es君」
- アートディレクター:信藤三雄
MV(ミュージックビデオ)情報
なし
ミュージックビデオはございません。
タイトルについて
仮タイトルは『即席ロック』。
「everybody goes」は直訳すると「誰もが行く」。
サブタイトルの「-秩序のない現代にドロップキック-」は歌詞考察で解説。
作詞はとても難航したそうです。
その理由を桜井さんは「この曲はサウンドがものすごくカッコイイ。でも、そこに同じくカッコイイ歌詞じゃつまらない。こういう曲だからこそ”砕けた感じ”の言葉を乗せたい」という方針があったからだそうです。
そこで最初に思いついた一つのフレーズが「秩序のない現代にドロップキック」だったとのこと。
歌詞考察
1番 Aメロ Bメロ(複雑に混ん絡がった〜)
複雑に混ん絡がった社会だ
組織の中で ガンバレ サラリーマン
知識と教養と名刺を武器に
あなたが支える 明日の日本そして you
<出典>Mr.Children/everybody goes -秩序のない現代にドロップキック- 作詞:桜井和寿
晩飯も社内で一人 インスタントフード食べてんだ
ガンバリ屋さん 報われないけど
この曲の歌詞には少なくとも3名(+娘)の人物が登場します。
まずはサラリーマン。
今日も遅くまで残業!晩飯はインスタント!
そんなガンバリ屋の彼らに、歌い手はエールを送ります。
「ガンバレ サラリーマン」
彼らのおかげで明日の日本がある!
混ん絡がった社会の中で毎日毎日働いている!
素晴らしいことだ!!!
・
・
・
報われないけど。
笑ってしまうようなオチですが、それくらい厳しい世の中だということが表現されています。
1番 Aメロ2 Bメロ2(上京して3年〜)
上京して3年 彼女にすりゃ chance
地道なダイエットの甲斐もあって
カメラの前で悩ましげなポーズ
そして ベッドじゃ 社長の上に股がってoh you
<出典>Mr.Children/everybody goes -秩序のない現代にドロップキック- 作詞:桜井和寿
それでも夢みてる ムービースター
世間知らずの お人好しさん
相変わらず 信じてる
次に登場するのは映画スターを夢見る女優さん。
上京して3年経った頃、スターになるためのチャンスが訪れました。
そのチャンスを掴めたのは、地道に毎日ダイエットを続けた成果?
いやしかし、カメラの前に立ってもあまり嬉しそうではない。
そう、彼女は枕営業で仕事を取っていたのです。
そんな状況でも相変わらずムービースターを夢見ているお人好しさん。
良いのか悪いのか?
どうあれ、それが今の日本の実態であると、歌い手は語ります。
で、あるならば…。
1番 サビ(everybody goes〜)
everybody goes everybody fights
<出典>Mr.Children/everybody goes -秩序のない現代にドロップキック- 作詞:桜井和寿
秩序のない現代に ドロップキック
everybody knows everybody wants でも No No No No
皆 病んでる
誰もが歩み、誰もが戦っているこの異様な現代に、ドロップキックをかましてやりたい!
そしてそうすべきだと誰もが知っている、誰もが望んでいる。
でも、何故か誰もそれをやろうとしない。
何故なのか?
そう、皆がもう既に、病んでいるからです。
2番 Aメロ Bメロ(愛する一人娘の〜)
愛する一人娘の為に
良かれと思う事はやってきた
“教育ママ”と 近所に呼ばれても
結構 家庭円満な この18年間でも you
<出典>Mr.Children/everybody goes -秩序のない現代にドロップキック- 作詞:桜井和寿
娘は学校 フケて デートクラブ
で、家に帰りゃ また おりこうさん
可憐な少女 演じてる
続いての登場人物はママと娘。
ママは18年間寝る間も惜しみ、我が娘の将来に期待しながら必死に育ててきました。
毎日しっかり学校へ行き、優秀で良い子に育っていく我が娘。
自分の熱心な教育を、ご近所さんに何と言われようとも、円満な家庭を築けていることに幸せを感じていました。
だがしかし!
その娘は学校へ行っていなかった!
なんと親の目を盗み、サボってクラブ通いをしているではありませんか!
そのことにママは気づいていない。
何故なら娘は家に帰ると、真面目で愛らしい娘を演じているからです。
1番同様にそんな報われない人(ママ)を描いています。
2番 サビ(everybody goes〜)
everybody goes everybody fights
<出典>Mr.Children/everybody goes -秩序のない現代にドロップキック- 作詞:桜井和寿
羞恥心のない 十代に水平チョップ
everybody knows everybody wants そして Yes Yes Yes Yes
必死で生きてる
喝を入れる対象がここで十代の若者へ。
度を超えた恥晒しは愚かでしかありません。
「若いうちに恥をかけ」とも言うが、誰かを悲しませるような愚か者には、水平チョップで分からせるしかない。
そうしなければならないことをみんな知っている。
みんな望んでいる。
でも、誰もが自分のことで精一杯。
今日を必死で生きることで精一杯。
そんな世の中なのです。
3番 Bメロ(Ah 仕事の出来ない〜)
Ah 仕事の出来ない連中は こう言う
<出典>Mr.Children/everybody goes -秩序のない現代にドロップキック- 作詞:桜井和寿
「あいつは変わった自惚屋さん」
こんなにガンバッてるのに
努力している人を、仕事が出来ない奴らが僻んでいる。
一生懸命頑張っているのにも関わらず、報われない人がいることも事実です。
どれだけ頑張っても出世できない人がいる。
どれだけ媚びを売ってもスターになれない人がいる。
どれだけ愛しても伝わらない人がいる。
また、良い曲を書いてもヒットチャートに載ることが出来ない歌手もいる。
ラスサビ(everybody goes〜)
everybody goes everybody fights
<出典>Mr.Children/everybody goes -秩序のない現代にドロップキック- 作詞:桜井和寿
退屈なヒットチャートに ドロップキック
everybody knows everybody wants
明るい未来って何だっけ?
everybody goes everybody fights
秩序のない現代に 水平チョップ
everybody knows everybody wants でも No No No No
皆 病んでる
必死で生きてる
毎度同じアーティスト、似たような曲が並ぶヒットチャート。
本当に“いいもの”とは一体なんなのか?
いわゆる「洗脳マシン」と呼ばれるメディア、それに踊らされる世間の未来は果たして明るいのか?
「皆 病んでる」それでも「必死で生きてる」。
人々はこの秩序の乱れに対抗しながら、今日も生きていかなければならないです。
聴きどころ
メロディー
作曲はシングルで唯一小林さんが関わっています。
※「作曲:桜井和寿・小林武史」名義。
その経緯は、当時(詳しくは「まとめ」の項目で解説)桜井さんと小林さんは「もっとライブで映える曲を作ろう!」と話し合っていました。
その時にまず小林さんが「『ラヴ コネクション』で追求したロック王道を、もう少し進化させスピードアップさせたものはどうだろうか?」と、あらかじめ考えていたメロディーのモチーフや曲構成等のアイデアを桜井さんに提示したのです。
そこから桜井さんが膨らませた曲であるため、「作曲:桜井和寿・小林武史」と表記されているのです。
ちなみに誰がどの部分を作曲されたのかは、明らかにされておりません。
日本屈指のメロディーメーカーのタッグは、ジャンルの垣根を超えてヒット曲を生み出してしまうのですね。
アレンジ
当時のMr.Childrenにはほとんどなかった全面ギターサウンドのロックナンバー。
社会風刺の歌詞だけではなく、アレンジも「これミスチル!?」と思わせるような裏切りを感じたことでしょう。
ライブ用に振り切って制作されただけあって、イントロからテンションアゲアゲです。
2番後の間奏では、重めのギターリフと女性コーラス(es sisters)のセクシーさが印象的。
からの、これまた当時はほとんどお目にかかれなかったガチガチのギターソロで、興奮度MAXです。
そして曲の最後には、ライブでは聴けないCDのみのアコギのフレーズが。
本編にアコギは入っていないのに、最後の最後に収録した意図は未だに謎ですね。
著名人の感想
歌手の絢香さんがアルバム『遊音倶楽部 〜2nd grade〜」でカバーをされています。
根底には社会に対する反抗心があるんだけど、それをすごくポップに表現していて。その素晴らしさに気付いたのは、実は自分がデビューしたあとなんですよ。「このフレーズ、自分が使いたかったな」って(笑)。
CHEMISTRY:堂珍嘉邦
初めて買ったCDはミスチルの『everybody goes』!
オリエンタルラジオ:藤森慎吾
ライブ&テレビ披露
ライブ
- ’95 Tour Atomic Heart
- STADIUM TOUR Hounen Mansaku 夏祭り1995 空(ku:)
- REGRESS OR PROGRESS
- THE SECRET LIVE
- SPECIAL EVENT INNOVATION 1999
- “DISCOVERY”TOUR ’99
- すずきのすすきの
- Concert Tour Q 2000~2001
- 昭和女子大学 学園祭
- CONCERT TOUR POPSAURUS 2001
- Tour 2009 ~終末のコンフィデンスソングス~
- DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25
- Dome Tour 2019 “Against All GRAVITY”
オススメ映像作品
Mr.Children Tour 2009~終末のコンフィデンスソングス~
この曲のライブ演奏で唯一小林さんが参加!
そのためピアノが入っていたりと、他とは違う雰囲気で味わえます。
ギターソロを珍しく田原さんが弾いているところも見所です!
テレビ
- 1994年12月12日「ポップジャム」
- 1994年12月23日「MUSIC STATION」
- 1995年2月20日「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」
- 1995年6月9日「FAN」
- 1995年7月24日「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」
- 1997年3月17日「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」
- 1997年4月4日「FAN」
まとめ
シングル発売時はまだミスチルをほとんど知らなかったので、初めて聴いたのはシングルとしてではなく、ALBUM 『BOLERO』が発売された時でした。
『innocent world』『Tomorrow never knows』と聴いてきた世間的には、ロック調で社会風刺的な歌詞に驚きがあったそうですが、『深海』から聴くようになった僕にはミスチルロックに免疫があり、衝撃度はそこまで大きくはなかったように思います。
ではMr.Childrenはブレイク真っ只中、何故このような攻撃的な曲をシングル化したのか?
その経緯を解説しましょう。
当時のMr.Childrenはアルバム『Versus』収録の『メインストリートに行こう』が、ライブを最高潮に盛り上げる役割を担っていました。
『’94 tour innocent world』を回っている頃、桜井さんと小林さんは合間をぬって「もっとライブで映える曲を作ろう!」と、プリプロを行います。
そしてそれを次に発売予定のシングル『Tomorrow never knows』のカップリングとして発表しようとアイデアを出していきます。
ツアー中、小林さんと二人で案を出し合い、レコーディングが始まり、歌録りも終わり、コーラスが追加され、曲は完成に近づきます。
その時、桜井さんは思います。
「B面じゃ勿体無いなぁ」
その翌日に桜井さんは小林さんに思いを打ち明けます。
「小林さん、この曲なんですけど…」
すると小林さんは桜井さんの言葉を待たず、「カップリングじゃ勿体無いってことだろ?」と何が言いたいのか即座に理解し、直ぐにレコード会社のスタッフを集めて会議。
こうして『everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-』はシングルとして発売することが決定したのです。
これで『Tomorrow never knows』のカップリングが既に発売されていた『Atomic Heart』からの『ラヴ コネクション』、『everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-』のカップリングが『クラスメイト』であった理由が分かりますね。
発売当時の僕はまだ小学生であまり記憶はないですが、まさに退屈なヒットチャートにドロップキックしてくれた作品だったのではないでしょうか。
僕はこういう思い切った曲も、一つの“ミスチルらしさ”だと思っています。