Mr.Children「in the pocket」の解説と歌詞考察だよ♪
ただ今を楽しんでいたい
楽曲紹介
楽曲収録CD
概要 | 収録作品 | 発売日 |
---|---|---|
ダウンロード配信 | in the pocket | 2024年8月30日 |
作詞:桜井和寿/作曲:桜井和寿/編曲:Mr.Children&牛尾憲輔
豆知識
映画『きみの色』主題歌だよ♪
本楽曲は編曲に『きみの色』の音楽監督を務めた牛尾憲輔さんが参加されているみたいだぜ。
レコーディングには、サックスの山本拓夫さん、トランペットの西村浩二さんも参加しているのよ♪1
この映画の主人公たちは
焼き上がる前の陶器のように、
少し力を加えただけで壊れてしまいそうなくらい繊細に思える。
言い換えれば、柔らかくしなやかだ。ある日のこと(なんと偶然にも初めて山田監督とお話しする機会を頂いたその日)、
ミーティング場所の駐車場に車を停めると、巣から落ちてしまった飛べない雛スズメを見つけた。
心配になって、拾って、家に連れて帰った。飼育方法を調べようとネットで検索すると、どうやら落ちてしまった「巣立ち雛(そう言うらしい)」は、そこからまた親鳥と共に、飛び立つ練習をし、成長していくらしい。
僕は慌てて、雛を発見した場所に戻り、雛を探しているであろう親鳥に謝罪しながら、拾った場所に雛鳥を戻した。
健やかな成長を願いながら。。あの日出会った雛鳥のように、
抱き上げるでも、背中を押すでもなく
無理に力を加えることなく、
主人公たちには
その繊細さのまま、
その柔さのまま、
しなやかに強く飛び立って欲しい。そんな歌でありたいと、
願いを込めてレコーディングさせてもらった。Mr.Children 桜井和寿
桜井和寿 / Mr.Children 公式HPより2
ジャケット情報
- アートディレクター:森本千絵
「ふっと見上げた光を手のポケットの中に」という想いが込められている
MV(ミュージックビデオ)情報
なし
タイトルについて
迷いや悲しみを過去の”ポケット”に入れ置いて「今を楽しもう」という歌。
歌詞考察
1番 Aメロ(見上げれば〜)
見上げれば頭上に
<出典>Mr.Children/in the pocket 作詞:桜井和寿
雲が流れる
自由にカタチを変えて動く雲が
思ってた以上に
自分探しに戸惑って 患って
足元ばっか見てた
空を見上げると、ふわふわと浮かぶ雲がカタチを変えながら動いている。
誰に指図されるでもなく“自由”に変化し続けています。
しかし自分はといえば、変化に戸惑い、思い悩み、周りを見渡す余裕すらなく足元ばかり見ていた。
でもその雲の動きに気付くことで、自分の思考や行動が制約されていたことを再認識することができました。
雲がそれを教えてくれたのです。
1番 Bメロ(堅苦しく〜)
堅苦しく考えずに
<出典>Mr.Children/in the pocket 作詞:桜井和寿
楽しんで良いんだって
あの日、叩き付けた
鍵盤の音は教えてくれた
例えば一人の人物は、何をするにも計画を立てて、慎重に動かなければならないというプレッシャーを感じていました。
そしてある日、そんな堅苦しい感情をぶつけるようにピアノの鍵盤を叩きます。
するとふと、あることに気付かされました。
完璧に演奏することや美しい音を奏でることが音楽の全てではない。
心のままに解放できる“自由”さが音楽の醍醐味なんだと。
そう、鍵盤は「堅苦しく考えずに楽しむ」というシンプルなメッセージをくれたのです。
1番 サビ(去年の上着の〜)
去年の上着のポケットに
<出典>Mr.Children/in the pocket 作詞:桜井和寿
迷いは置いてきたんだ
今日からまた新しい
「私」が始まる
心はまだ不安定で
カーテンのように揺れるけど
吹き抜ける風の
心地良さを感じる
新たな自分のスタートを切るのと同時に、心の揺れを受け入れながら前向きに進もうとするフレーズ。
「ポケットに迷いは“置いてきた”」ということは、迷いや不安を完全に捨て去るのではなく、そのままにして新しい自分に切り替えるということ。
何故ならその経験を踏まえたうえでの自分だからです。
迷いを置いてきたのは去年のことでした。
きっとその1年の間に何度か迷いに苛まれたのでしょう。
まだ心は安定していないけれど、その不安定さが風を感じるように心地良く思えるようになってきた。
「今日からまた新しい「私」が始まる」。
その心地良さを見出すことで、少しずつ変化していく自分を楽しむことができたです。
2番 Aメロ(経験値に〜)
経験値によって
<出典>Mr.Children/in the pocket 作詞:桜井和寿
失敗を避けて
簡単に答えを導く術を知る
なのにどこかきっと削り取られた
大胆で不恰好な大事なモノがある
人生では誰もが経験を積んでいくことで、効率的に物事を進められるようになっていきます。
それによって無駄なエネルギーを使ったり、試行錯誤に時間を費やすことは少なくなる。
どうすれば同じ失敗を繰り返さないかを学んでいくからです。
でもその一方で、「削り取られたモノ」がある。
それは例えば若さ故の大胆さや、不完全であるが故の輝き、純粋さ。
つまり本来の自分らしさを見失った気がしているのです。
2番 Bメロ(「好きな色を〜)
「好きな色を手に取って
<出典>Mr.Children/in the pocket 作詞:桜井和寿
描いていいんだ」って
絵が苦手な子供には
そう言って画用紙を渡そう
なんて…
絵を描くという行為は自己表現に近いものがあります。
例えば数人に「何も見ずに“車”の絵を描いて」と言うと、それぞれいろんな形、いろんな色の車が描かれるでしょう。
上手い人もいれば苦手な人もいる。
黒い車かもしれないし、青い車かもしれない。
人生も同じで、本来は自分の好みや感情に従って、自由に色を選択することができます。
主人公はそれを上手くできない子供にアドバイスをします。
でも最後に「なんて…」というフレーズがあるのは、主人公自身もきっと絵を描くことが苦手なのです。
自己表現に不安があるのなら、まずは自由な表現を許可し、提供してあげることも大切なのです。
2番 サビ(絡まった靴紐は〜)
絡まった靴紐は
<出典>Mr.Children/in the pocket 作詞:桜井和寿
解くのを諦めて
忘れて遊んでたら
知らぬ間に解けてた
思うようにはならない
ハプニングの連続でも
分かってる
ならばそれを楽しむだけ
「靴紐が絡まる」という“ちょっとした問題”が起きた時、すぐに解けない苛立たしさがあります。
でも主人公はその状況を放置したまま目の前の”楽しいこと”に夢中になった。
すると自然と解決していた。
思い通りにいかないことに執着せず、むしろ自然に任せられる心のゆとりが重要なのです。
それでも人生にハプニングは付きもの。
だけどいちいち抵抗していても、また何かしらのトラブルは起こってしまう。
ならばそれを受け入れて楽しんでしまうほうが、きっと幸せでいられるのです。
Cメロ Bメロ3(誰の心にも〜)
誰の心にも
不透明で濁った景色がある自由でいる方法なんて
<出典>Mr.Children/in the pocket 作詞:桜井和寿
いくつだってあるって
昨夜掻き鳴らした
六弦の音は教えてくれた
「不透明で濁った景色」というのは、明確に物事が見えず、どの方向に進むべきか分からない状態。
誰しもがいつ何時も心の中がクリアであるはずはなく、きっと何かしらの悩みや問題を抱えています。
でも自由を感じるための方法はいくつだってある。
例えば一人の人物は、ギターを掻き鳴らした時に解放的な気分になった。
音楽は理屈ではなく感情に直接働きかけるため、言葉では表現できない感覚や気付きをもたらします。
絵を描くのと同じ、自己表現ができる瞬間。
その瞬間だけは、「心にある濁った景色」もクリアに見えたのです。
ラスサビ(昨日のシャツの〜)
昨日のシャツのポケットに
<出典>Mr.Children/in the pocket 作詞:桜井和寿
悲しみを置いて行くんだ
今日からまた新しいあなたが始まる
心はずっと不安定で
カーテンのように揺れるけど
吹き抜ける風の
心地良さを感じて
ただ今を楽しんでいたい
上着を脱いで迷いを断ち、その下に着ていたシャツも脱ぎ、悲しみを置く。
そうやって心を軽くしていき、Tシャツ1枚になれば、より風も気持ち良い。
それでも毎日が良いことばかりではない。
悲しいことがあれば、いつもそれは昨日に置いて行けばいい。
そうやってリセットしていくことを主人公たちは学びました。
この曲は誰かが背中を押してくれる歌ではありません。
ちょっとした気付きや出来事が、前に進めるきっかけとなっています。
だから新しい“あなた”というのは、昨日のシャツを着ていた自分が今日の自分の背中を押しているのだと僕は考えます。
人の心は常に揺れ動くもの。
無理にコントロールするのではなく、その揺れの心地良さを感じながら楽しんでいられることが重要なのです。
聴きどころ
メロディー
久しぶりにキャッチーなメロディーでとても耳に心地良いです。
Aメロは『運命』っぽく、サビは『Over』っぽい?
桜井さんらしいメロディーラインと譜割りにどこか懐かしさを感じます。
リズムもノリやすいため、ライブでは手拍子が合いそうですね。
アレンジ
アレンジは『きみの色』の音楽監督を務めた牛尾憲輔さんが共同編曲として鍵盤で参加しています。3
牛尾さんが手掛けた映画『聲の形』のサウンドトラックをMr.Childrenのメンバーが聴き、この世界観を楽曲に取り入れたいとオファーしたことから実現したとのこと。
また、イントロの鐘の音は牛尾さんのアイデアによるもので、その理由について牛尾さんは「映画のモデルとなった場所に行って録音した際に、教会の鐘の音がとてもきれいに録れたので、それを主題歌の冒頭に入れてもらうことでエンドロールと本篇世界の音像をブリッジさせられると思ったからです」と語っています。
鐘の音があるだけでワクワクしますよね。
イントロクイズでこの曲があったら初級でしょう(笑)
JENのドラム、ナカケーのベースも主役級の演奏をしており、かつブラス隊も印象的。
ラスサビ前に掻き鳴らされるギターのディストーションもカッコいい。
とても元気が出るポップなMr.Childrenらしいアレンジです。
それにしても最近のミスチルは、サビの前半は大人しく後半でサビらしくなる構成が目立ちますね!
著名人の感想
まぶしくて、でも輪郭がはっきりとしていて、いろんな色の集合体がこの曲を形作っているんだな、と夢中になって何度も再生ボタンを押しました。
打ち合わせで初めてお会いした時に「そーっっとね」とくしゃくしゃの笑顔で段ボールに保護したすずめをのぞかせてくださった桜井さんがその場の何よりも柔らかくて強くはかなく感じて、すっかり身を任せようと思ったのでした。
山田尚子:アニメ演出家・監督・アニメーター/映画「君の色」公式HP
ライブ&テレビ披露
ライブ
オススメ映像作品
現在映像収録作品はございません
テレビ
なし
まとめ
個人的にはCDシングルとしてリリースしてもよかったのではと思えるくらい大好きな曲です。
配信されたばかりというのもありますが、毎日聴いて毎日口ずさんでおり、最近の曲の中では一番好きかもしれません。
なんて、大絶賛です(笑)
この「まとめ」の項目はまた時間が経ったら書き直しますが、今言いたいのは『記憶の旅人』と『in the pocket』が収録される次なるアルバムがとにかく楽しみだということ。
『miss you』はMr.Childrenとしては少し寄り道したアルバムでしたが(もちろん最高のアルバムには違いないです)、22枚目のアルバムは、本格的に半世紀へのスタートを切ったと言えるMr.Childrenのアルバムになりそうですね。